一 刑法第九六条ノ三第二項のいわゆる談合罪の主体は、競買等の希望者に限られるものではなく、自らはその希望をもたないものであつても、自己と特別な関係にある競買等の希望者があつて、これに影響を及ぼすことのできる地位にあるものであれば足りる。 二 刑法第九六条ノ三第二項の罪が成立するためには、競買等の希望者全員が談合に参加することは必要でないものと解するが相当である(昭和三〇年(あ)第二七一八号同三二年一二月一三日第二小法廷判決、刑集一一巻一三号三二〇七頁参照)。
一 刑法第九六条ノ三第二項のいわゆる談合罪の主体。 二 談合罪の成立には競買等の希望者全員の参加が必要か。
刑法96条ノ3,刑法96条ノ3第2項
判旨
公売入札妨害罪(刑法96条の3第2項)の主体は競買等の希望者に限定されず、希望者に影響を及ぼし得る地位にある者も含まれ、また全員の談合参加も不要である。
問題の所在(論点)
1. 競買等の希望者ではない者が、公売入札妨害罪(談合罪)の主体となり得るか。2. 本罪の成立に、競買希望者の「全員」が談合に参加することが必要か。
規範
刑法96条の3第2項(現行96条の6第2項)の公売入札妨害罪は、競売等の公正を害する危険のある行為を規制するものである。したがって、本罪の主体は、競買等の希望者に限られず、自己と特別な関係にある希望者に影響を及ぼし得る地位にある者も含まれる。また、本罪の成立には、競買等の希望者全員が談合に参加することは必要とされない。
重要事実
被告人が、公売(競売等)において公正を害する目的で談合等の行為を行った事案。被告人自身が直接の競買希望者であったか、あるいは一部の希望者のみが談合に関与していた状況であったかが争点となった(具体的な事実関係の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
本件において、被告人が自ら競買の希望を持たない場合であっても、自己と特別な関係にある希望者に対して影響を及ぼし得る地位にあるならば、本罪の保護法益である競売の公正を害する危険を生じさせ得る。また、一部の希望者が談合から排除されていたとしても、特定の希望者間での談合がなされれば、適正な価格形成や自由な競争を阻害する危険が生じるため、全員の参加を要件とする必要はない。
結論
被告人は本罪の主体となり得るとともに、希望者の一部による談合であっても、公売入札妨害罪は成立する。
実務上の射程
入札妨害の主体を「競買人」に限定せず、背後で指示を出す有力者や関係者にも広げる点、および「全員参加」を不要とする点で、公共入札や競売の公正を広く保護する射程を持つ。答案では実行行為者の適格性や、談合の規模が不完全な場合の既遂判断において活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2483 / 裁判年月日: 昭和33年1月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公売入札等の妨害罪(談合罪)における「公正な価格を害する目的」とは、公正な自由競争により形成されるべき価格よりも入札施行者に不利益な価格を形成する目的をいい、「不正の利益を得る目的」とは、公正な価格が害されることを認識しつつ談合の対価を授受する目的をいう。 第1 事案の概要:被告人らは、公売入札等…