刑法第九六条ノ三にいう公の「入札」は、当該工事の施行者において落札者を決定するにあたり、入札の結果施行者に最も有利な条件を申し出たことを契約締結の唯一の要素とする場合のみでなく、そのことを重要の要素としつつこれにその他の条件を加味して落札者を決定することができる場合も含まれるものと解すべきである
刑法第九六条ノ三にいう公の「入札」の範囲
刑法96条ノ3
判旨
刑法96条の3第2項にいう「公の入札」とは、入札者が互いに他の入札内容を知らずに行う自由競争を通じて、施行者に有利な契約条件を見出す契約締結方法をいう。落札者の決定において、有利な入札条件が唯一の要素である場合に限られず、それを重要な要素としつつ他の条件を加味して決定する場合であっても、競争入札の実質を有する以上は同条の入札に当たる。
問題の所在(論点)
刑法96条の3第2項(現行96条の6第2項)にいう「公の入札」の意義。特に、価格等の入札条件が契約締結の唯一の決定要素ではなく、他の事情も加味して落札者を決定する「見積による随意契約」方式がこれに含まれるか。
規範
刑法96条の3第2項(当時の規定。現行96条の6第2項)にいう「公の入札」とは、国や地方公共団体等の施行者が、自己に有利な契約内容を見出すため入札者をして自由競争をさせる契約締結の方法をいう。具体的には、①入札者が互いに他の入札内容を知らずに自己の申出を行い、②入札の結果として施行者に最も有利な条件を提示したことが、契約締結の唯一の要素である場合に限定されず、これを「重要な要素」としつつ他の条件を参酌して落札者を決定する場合であっても、自由競争の実質を保有する限り、これに含まれる。
重要事実
岩手県土木部は、所管の道路工事請負契約において、法規上の指名競争入札ではなく、内規に基づく「見積による随意契約」方式を採用した。この方式は、指名された複数の業者に見積書を提出させ、最も有利な条件を提示したことを重要な要素としつつ、他の条件も参酌して落札者を決定するものであった。被告人らは、本件工事の契約において特定の業者を落札させるべく事前に通謀し、談合を行ったとして競売入札妨害罪(談合罪)で起訴された。弁護人は、本件方式は随意契約であって「公の入札」に当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件の「見積による随意契約」方式は、施行者が複数の者から見積を募り、各入札者が他者の内容を知らずに競争を行うものである。また、有利な条件の提示が落札者決定の「唯一」の要素ではないものの「重要な要素」とされており、施行者にとっては有利な条件で契約できる利点があり、入札者間には契約獲得に向けた競争が生じている。したがって、本件方式は指名競争入札と実質的に異ならず、自由競争を前提とした契約締結方法といえるから、「公の入札」に該当すると判断される。
結論
本件の契約方式は「公の入札」に該当するため、これに関してなされた談合行為は刑法96条の3第2項(当時)の談合罪を構成する。
実務上の射程
形式的な契約名称(随意契約等)にとらわれず、複数の者に競争的な申出をさせ、その内容を重要視して契約相手を決める仕組みであれば、広く談合罪の客体となることを示した。実務上、行政が行うプロポーザル方式や企画競争など、価格以外の要素を総合評価して契約相手を決める手続における談合を処罰する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和40(あ)2014 / 裁判年月日: 昭和41年9月16日 / 結論: 棄却
入札妨害罪の成立に必要な「公ノ入札」が行なわれたというためには、権限のある機関によつて、適法に入札に付すべき旨の決定がなされたことが必要であり、かつそれをもつて足りる。