不動産の競売における入札により最高価買受申出人となった者に対し、威力を用いてその入札に基づく不動産の取得を断念するよう要求したときは、競売入札妨害罪が成立する。
最高価買受申出人に対する威力の使用と競売入札妨害罪の成否
刑法(平成3年法律31号による改正前のもの)96条の3
判旨
不動産の競売において、最高価買受申出人となった者に対し、威力を用いて不動産の取得を断念するよう要求する行為は、刑法96条の3第1項(当時)の競売入札妨害罪を構成する。
問題の所在(論点)
入札が終了し、最高価買受申出人が決定した後に、当該申出人に対して威力を用いて取得断念を迫る行為が、刑法96条の3第1項の競売入札妨害罪(現刑法96条の6第1項)に該当するか。
規範
競売入札妨害罪における「公正を害すべき行為」または「妨害」には、入札手続そのものへの干渉のみならず、入札の結果判明した最高価買受申出人に対し、威力を用いてその後の手続(不動産の取得)を断念させるよう働きかける行為も含まれる。
重要事実
被告人は、不動産の競売における入札により、適法に最高価買受申出人となった者に対し、威力を用いてその入札に基づく不動産の取得を断念するよう要求した。原審はこれを競売入札妨害罪(旧刑法96条の3第1項)に当たると判断したため、被告人が上告した。
あてはめ
本件において、被告人は最高価買受申出人という入札手続の結果生じた地位にある者に対し、威力を用いて不動産取得の断念を要求している。競売の公正および円滑な実施を保護する同罪の趣旨に照らせば、入札の段階のみならず、入札によって決定された最高価買受申出人が売却許可決定を経て所有権を取得するまでの一連の過程を妨げる行為も、競売の適正な実施を害するものといえる。
結論
最高価買受申出人に対して取得を断念するよう要求した行為に、競売入札妨害罪が成立するとした原判決の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は、競売入札妨害罪の保護法益を「公売・競売の適正・公正」と広く捉え、入札行為そのものへの妨害だけでなく、入札後の最高価買受申出人に対する働きかけも処罰対象に含めることを明示した。現行刑法96条の6第1項の解釈においても、妨害行為の時期的な広がりを検討する際の重要な指針となる。
事件番号: 昭和30(あ)2483 / 裁判年月日: 昭和33年1月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公売入札等の妨害罪(談合罪)における「公正な価格を害する目的」とは、公正な自由競争により形成されるべき価格よりも入札施行者に不利益な価格を形成する目的をいい、「不正の利益を得る目的」とは、公正な価格が害されることを認識しつつ談合の対価を授受する目的をいう。 第1 事案の概要:被告人らは、公売入札等…