第一審公判調書に「証拠に関する事項、別紙証拠関係目録記載のとおり」と記載されているにかかわらずその別紙が添付されていない場合(調書作成当時は添付されていたものと推察される)に、上級審の職権調査により第一審に関与した裁判官または書記官補の提出した回答書は、右の公判調書に記載のない部分の起訴手続を証明する資料となる。
公判期日における訴訟手続の証明資料の一例
刑訴法52条,刑訴規則44条
判旨
公判調書に証拠関係目録等の別紙が添付されていない場合であっても、裁判所は職権による調査を行い、適法な証拠調べがなされた事実を確認することができる。
問題の所在(論点)
公判調書の記載が不備である場合に、上告裁判所が職権で当時の証拠調べの有無を確認し、手続の適法性を判断できるか。
規範
公判調書の記載に欠落がある場合、上告裁判所は刑事訴訟法411条等の適用の有無を判断するため、職権によって事実関係を調査し、訴訟手続の適法性を確認することができる。
重要事実
第一審の第5回公判調書において「別紙証拠関係目録記載のとおり」との記述があるにもかかわらず、実際には当該別紙が添付されておらず、欠丁となっていた。このため、弁護人は適法な証拠調べがなされていない旨を主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、調書の契印の不整合等から作成当時は別紙が添付されていたと推察し、職権により第一審裁判所の裁判官および書記官補に対して回答書を求めた。その回答により、所論の書類が実際には適法に証拠提出および証拠調べが行われていた事実が十分に認められると評価した。
結論
適法な証拠調べがなされたことが職権調査により確認できる以上、訴訟手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
公判調書の形式的な不備が直ちに無効を招くわけではなく、事実上の調査によってその内容を補完し得ることを示している。実務上は、調書の「絶対的証明力」(刑訴法52条)との関係に留意しつつ、欠落時の補充手段として位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)2720 / 裁判年月日: 昭和28年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書の記載に基づいて第一審の訴訟手続の適法性が認められる場合には、当該公判調書の内容を理由として訴訟手続の違背を主張することは、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第一審裁判所の構成の違法、審判公開に関する違法、およびその他の訴訟手続の違背を理由として上告を申し立てた事案…