公判調書の記載が明白な誤記である場合には、公判調書は正しい内容にしたがつて証明力を有する。
明白な誤記と公判調書の証明力。
刑訴法52条
判旨
公判調書の記載が明白な誤記である場合には、刑事訴訟法52条にかかわらず、公判調書は正しい内容に従って証明力を有する。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法52条は、公判期日の訴訟手続で公判調書に記載されたものは調書のみによって証明すると規定するが、明白な誤記がある場合にまで記載通りの証明力を認めるべきか。
規範
公判調書の記載内容が客観的な状況や前後の文脈から見て明白な誤記であると認められる場合には、当該調書は形式的な記載通りではなく、本来記載されるべきであった正しい内容に従って証明力を有するものと解する。
重要事実
被告人側は、第一審の公判手続において、公判調書の記載を根拠として訴訟法違反等の不備があったと主張した。しかし、当該調書の記載内容は明白な誤記であることが記録上認められる状態であった。
あてはめ
本件では、公判調書の記載が明白な誤記であると認められる。この場合、調書の形式的な記載に拘束されるのではなく、実態としての正しい内容に基づき手続の適否を判断すべきである。したがって、誤記を前提とした被告人側の法令違反の主張は、正当な手続がなされたという正しい内容に基づく判断を妨げるものではない。
結論
公判調書の記載が明白な誤記である場合、正しい内容に従って証明力を有するため、第一審の訴訟手続に判決に影響を及ぼすべき法令違反は存在しない。
実務上の射程
刑事訴訟法52条の「絶対的証明力」の例外を画した判例である。答案上では、調書の記載に明らかな間違いがある場合に、形式的真実よりも実質的な手続の適正を優先する理屈として活用できる。ただし、あくまで「明白な誤記」に限定される点に注意を要する。
事件番号: 昭和28(あ)5475 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
第一審公判調書に「証拠に関する事項、別紙証拠関係目録記載のとおり」と記載されているにかかわらずその別紙が添付されていない場合(調書作成当時は添付されていたものと推察される)に、上級審の職権調査により第一審に関与した裁判官または書記官補の提出した回答書は、右の公判調書に記載のない部分の起訴手続を証明する資料となる。