本件A労働者組合と須賀川公共職業安定所間における失業対策事業の適格審査についての交渉のごときものは、憲法第二八条の保障する権利の行使に該当しない。
憲法第二八条の団体交渉にあたらない一事例
憲法28条
判旨
労働組合と公共職業安定所との間における失業対策事業の適格審査に関する交渉は、使用者と勤労者の関係に立つものではないため、憲法28条が保障する団結権等の行使には該当しない。
問題の所在(論点)
労働組合が公共職業安定所等の公的機関に対して行う行政上の審査等に関する交渉行為が、憲法28条によって保障される「権利の行使」に該当するか。
規範
憲法28条が保障する労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)の行使といえるためには、当該行為が「使用者対勤労者」という労使関係を前提とした交渉や活動である必要がある。行政庁による行政処分や公的な審査プロセスに関する交渉は、原則としてこの保障の対象に含まれない。
重要事実
被告人らが所属する労働組合が、公共職業安定所に対し、失業対策事業の適格審査に関する交渉を求めた。この交渉過程における行為が刑事事件として問われた際、被告人側は、当該交渉は憲法28条に基づく正当な権利行使であると主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)5214 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公共職業安定所による失業者への就職斡旋は使用者と勤労者の関係に立つものではないため、これに対する行動は憲法28条が保障する団結権や団体行動権の行使には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、公共職業安定所が失業者に対して行う就職の斡旋業務に関連して、何らかの犯罪行為(具体的な罪名は判決文からは不…
あてはめ
本件におけるA労働組合と須賀川公共職業安定所との間の交渉は、失業対策事業の適格審査を目的とするものである。このような交渉は、私法上の雇用主に対する労働条件の改善等を目的とするものではなく、行政主体が公権力を行使する過程に関連するものである。したがって、これは「使用者対勤労者」という労使関係に基づく交渉とはいえず、憲法28条の保障の枠外にあると解される。
結論
本件交渉は憲法28条の権利行使には該当せず、上告は棄却される。
実務上の射程
公務員や公的機関との関係における「労働基本権」の限界を示す判例である。行政処分や公的な審査を対象とする交渉に正当行為(刑法35条)としての違法性阻却事由を検討する際、憲法28条を直接の根拠とすることを否定する論理として機能する。
事件番号: 昭和54(あ)481 / 裁判年月日: 昭和56年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法上の正当な団体交渉や組合活動であっても、その手段・方法において社会的に相当なものといえない場合には、憲法28条による刑事免責の保障は及ばない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の団体交渉ないし組合活動として一連の行為を行ったが、その態様が問題となり、暴力行為等処罰に関する法律違反等…