一 強姦の被害者の法定代理人の告訴権は固有権である。 二 被害者が犯人を知つた時から六ケ月を経過していても、法定代理人がこれを知つた時から六ケ月の期間内にした親告罪の告訴は有効である。
一 法定代理人の告訴権は固有権か 二 法定代理人が犯人を知つた時から六ケ月の期間内にした親告罪は有効か
刑訴法231条1項,刑訴法235条
判旨
法定代理人の告訴権は、被害者の告訴権とは別に独立して行使できる固有の権利(固有権)である。したがって、法定代理人による告訴期間は、法定代理人自身が犯人を知った時から起算される。
問題の所在(論点)
法定代理人の告訴権(刑訴法231条1項)は、被害者の告訴権の代理権(代位権)か、それとも独立した固有権か。これに伴い、法定代理人による告訴期間の起算点は、被害者が犯人を知った時か、法定代理人が犯人を知った時か。
規範
刑事訴訟法231条1項に基づく法定代理人の告訴権は、被害者の告訴権に依存する代理権ではなく、法定代理人に認められた独立の固有権である。したがって、告訴期間(同法235条1項)は、法定代理人自身が犯人を知った時から進行する。
重要事実
被告人は強姦罪(当時の親告罪)を犯したが、被害者の法定代理人らが告訴を行ったのは、犯罪があった時から6か月を経過した後であった。しかし、法定代理人らが強姦の事実(および犯人)を知ったのは告訴の前日であった。弁護人は、犯罪から6か月を経過しているため告訴期間を徒過しており、起訴は無効であると主張して上告した。
事件番号: 昭和28(あ)4321 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親告罪において、被害者が未成年者である場合、その法定代理人は独立して告訴権を行使することができる(刑事訴訟法231条1項)。本件では被害者の父による告訴が有効であり、訴訟条件を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が親告罪に該当する罪を犯したとされる事案において、昭和27年2月20日、被害者…
あてはめ
法定代理人の告訴権が固有権である以上、その行使は被害者の意思や告訴期間の状態に左右されない。本件において、犯罪の発生から6か月以上が経過していたとしても、告訴権者である法定代理人らが犯人を知ったのは告訴の前日である。したがって、法定代理人自身の知った時から起算すれば、6か月の告訴期間(刑訴法235条1項)を徒過していないといえる。
結論
法定代理人の告訴権は固有権であり、本件告訴は告訴期間内になされた有効なものである。したがって、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
被害者が告訴を望まない場合や、被害者自身の告訴期間が徒過した場合であっても、法定代理人は独自に告訴できる。答案上は、告訴の有効性を論じる際、告訴権者ごとに起算点を個別判断する根拠として本判例を引用する。
事件番号: 昭和28(あ)1367 / 裁判年月日: 昭和28年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみに基づいて事実を認定することは憲法及び刑事訴訟法に反するが、第一審判決が自白以外の証拠も併せて事実を認定している場合には、自白のみによる認定とはいえず適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において有罪判決を受けた際、その事実認定が被告人の自白のみによってなされたとして、憲…
事件番号: 昭和37(あ)399 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
強姦未遂の被害者の法定代理人は告訴権の抛棄をすることはできず、従つて右被害者の検察官に対する告訴は有効であるとする原判示は相当である。