倉荷証券に記載されている物件の大部分が虚偽無価値のものであることを知れば相手方は同証券を担保に金員を交付することがなかつた関係がある以上、右倉荷証券自体は真正に成立したものであるため、相手方と倉庫営業所との間における寄託に関する事項は同証券に記載されているところによるとしても刑法第二四六条第一項の詐欺罪の成立を妨げない。
倉荷証券に記載された物件の大部分が虚偽無価値のものである場合にその倉荷証券を担保として金融を受けた行為と詐欺罪の成否
刑法246条,商法627条,商法602条,商法599条
判旨
倉荷証券自体が真正に成立したものであっても、表示された寄託物の大部分が虚偽無価値であり、その事実を隠して金融を受けた場合には詐欺罪が成立する。
問題の所在(論点)
倉荷証券自体が有効に成立しており、商法上の法律関係(善意取得等)が生じ得る場合であっても、記載内容が虚偽であれば詐欺罪が成立するか。
規範
有価証券が形式的に真正に成立している場合であっても、証券に表示された目的物の実質が虚偽無価値であり、その真実を告知すれば相手方が交付に応じない関係にあるときは、詐欺罪の欺罔行為にあたる。
重要事実
被告人は倉荷証券を利用して金融を受けようとしたが、当該証券に表示されている物件の大部分は虚偽無価値なものであった。被告人はこの実態を秘して、真正な証券であることを前提に金融機関等から融資(またはこれに準ずる経済的利益の供与)を受けた。
事件番号: 昭和27(あ)6498 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における欺罔行為は、必ずしも被害者に経済的損失を負わせることのみを目的とするものではなく、被害者が真実を知っていれば金品を交付しなかったであろう重要な事項について偽ることを含む。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、特定の商品や権利の販売において、その性質や価値について虚偽の事実を告げた。…
あてはめ
本件では倉荷証券そのものは真正に作成されている。しかし、証券に記載された寄託物の実体は大部分が虚偽無価値であった。このような物件では本来金融を受けることは不可能である。したがって、物件が実在しないという真実を隠して証券を提示した行為は、相手方の交付判断を誤らせる欺罔行為にあたり、これに基づいて金融を受けた以上、詐欺罪の成立を妨げない。
結論
被告人に詐欺罪が成立する。商法上の証券の効力が認められ得る場合であっても、刑事上の詐欺罪の成否には影響しない。
実務上の射程
形式的に真正な文書や証券を手段として用いた場合でも、その前提となる取引の重要事項(目的物の存否・価値)に虚偽がある場合の欺罔性を肯定する際の根拠となる。民事・商法上の有効性と刑事上の違法性は別次元で判断されることを示している。
事件番号: 昭和46(あ)616 / 裁判年月日: 昭和47年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における財物の交付とは、欺罔行為に基づく錯誤によって財物の現実の占有移転がなされることをいい、実体法上の権利移転や私法上の効果の有無は同罪の成否に影響しない。 第1 事案の概要:被告人が、欺罔行為を用いて相手方から財物の交付を受けた。これに対し、弁護人は、交付後もなお交付者が占有権に基づき返…