一 某小学校の後援会副会長である被告人が同会会計係某より同校教員住宅の修繕費として受領し保管中の金員を擅に競輪車券購入費に充当費消して横領したという被告事件において、右会計係某の判示の頃被告人に判示金員を判示のような趣旨で渡したのに、B教員住宅の修繕をした様子も見えなかつたという趣旨の供述は、被告人の自白を補強する証拠となる。 二 所論の控訴趣意補充書は、控訴趣意書提出最終日を一八日経過した後に出されたものであつて、その内容も期間内提出の被告人の控訴趣意書を補充しただけでなく、新な論旨を述べたものである。そうしてその提出の遅延がやむを得なかつたと認められるような事情も見出されないし、また公判廷において該書面に基き弁論したことによつて、遅延の瑕疵が治癒されるものとも認められない。それ故この点について判断しなかつた原判決には所論のような違法はない。
一 費消横領被告事件において被害者の供述は被告人の自白の補強証拠となるか 二 法定期間の経過後に提出された控訴趣意補充書に対する審判と裁判所の自由裁量
憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法376条,刑訴法392条,刑法252条,刑訴規則238条,刑訴規則236条,刑訴規則246条
判旨
憲法38条3項が自白に補強証拠を要する趣旨は、客観的犯罪の架空性を防ぐため、客観的事実の確実性を担保する点にある。したがって、自白と補強証拠が相まって犯罪構成要件事実を認定できる場合は、自白の各部分について個別に補強証拠を要するものではない。
問題の所在(論点)
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白にかかる事実のどの程度までを裏付ける必要があるか。自白の各部分について個別の補強証拠が必要か。
規範
憲法38条3項(および刑訴法319条2項)が補強証拠を必要とする趣旨は、被告人の主観的な自白があっても客観的に犯罪が全然実在しない架空の事態を防止することにある。したがって、主として客観的事実の実在について補強証拠により確実性が担保されれば足り、被告人の自白と補強証拠とを総合して犯罪構成要件たる事実が認定できるならば、自白の各部分につき一々補強証拠を要するものではない。
重要事実
被告人は、特定の金員を修繕費名目で受け取ったという事実(横領罪等と推認されるが判文上罪名は明示なし)について自白をしていた。これに対し、第一審が挙げた証拠(証人Aの供述調書)の内容は、「被告人に判示金員を渡したが、指定の住宅(B教員住宅)の修繕をした様子が見られなかった」というものであった。被告人は、この補強証拠は自白の各部分を裏付けるには不十分であり、憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、証人Aの供述は、金員の授受という客観的事実および目的外使用を示唆する状況を裏付けている。この証拠は、被告人の自白が真実であっても架空のものではないことを推認させるに足りるものである。かかる証拠が存在する以上、自白と補強証拠が相まって全体として犯罪事実を認定できるといえ、自白の細部すべてに個別の裏付けがなくとも、憲法38条3項が要求する「実在の担保」としての役割を十分に果たしていると評価される。
結論
被告人の自白を唯一の証拠として有罪としたものではないため、憲法38条3項違反には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
補強証拠の範囲に関する「実質説(架空自白防止説)」を採るリーディングケース。答案では、客観的構成要件に該当する事実(特に罪体)の一部について補強があれば足り、自白の各部分や犯人との結びつき(本人性)にまで補強を要しないとする根拠として引用する。
事件番号: 昭和28(あ)2698 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が存在する場合であっても、その自白が他の独立した証拠によって十分に補強されていると認められる限り、自白のみによる処罰を禁じた憲法第38条第3項の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する事案において、第一審及び第二審が有罪判決を下した。これに対し弁護人は、被告人の自白…