被告人に対し控訴趣意書提出最終日の通知がなされなくても、弁護人に右通知がなされ、弁護人が期間内に控訴趣意書を提出し、公判期日においてこれに基いて弁論し、被告人に対する右通知の違法について何ら異議を述べなかつた場合には、刑訴第四一一条を適用すべき場合にあたらない。
被告人に対し控訴趣意書提出最終日の通知がなされなくても刑訴第四一一条にあたらない一事例
刑訴法411条,刑訴規則236条1項,刑訴規則236条2項
判旨
控訴趣意書提出最終日の通知が被告人に届かず送達が無効であっても、選任された弁護人に対して適法な通知がなされ、同弁護人が期間内に趣意書を提出し公判で弁論を行っていた場合には、当該手続違背は判決に影響を及ぼすべきものとは認められない。
問題の所在(論点)
控訴申立人である被告人本人に対し、住居表示の誤りにより控訴趣意書提出最終日の通知(刑訴規則236条)が到達しなかった場合、当該手続違背は判決を取り消すべき事由となるか。
規範
控訴申立人に対する控訴趣意書提出最終日の通知(刑訴規則236条)が欠如する等の手続上の違法がある場合であっても、弁護人に対して適法な通知がなされ、かつ、弁護人がその通知に基づき期間内に控訴趣意書を提出して公判期日に出頭し、何ら異議を述べずに弁論を終結させているときは、実質的な防御権の行使が図られており、当該違法は判決に影響を及ぼすべきもの(刑訴法411条1号参照)とは認められない。
重要事実
被告人Dは控訴申立と同時に弁護人を選任した。原審は、被告人の住居表示を誤って控訴趣意書提出最終日の通知を送付したため、被告人本人には通知が到達しなかった。一方で、原審は選任された弁護人に対しては適法に同通知を発送・送達した。弁護人は、定められた期間内に控訴趣意書を提出し、原審公判期日に出頭して当該趣意書に基づき弁論を行った。その際、被告人に対する送達の不備について弁護人から異議は述べられなかった。
あてはめ
被告人の住居でない場所に送付された通知は送達の効力を生じず、被告人本人への通知を欠いた点は刑訴規則236条に違反する。しかし、本件では被告人が選任した弁護人に対し適法な通知がなされている。同弁護人はこの通知に基づいて期間内に控訴趣意書を提出し、公判期日においてその内容に基づき実質的な弁論を尽くしている。このように弁護人を通じて控訴審における防御の機会が十分に保障された以上、被告人本人への通知漏れという形式的な不備が、結論としての判決に影響を及ぼしたとはいえない。
結論
被告人に対する通知の不備は判決に影響を及ぼすべきものとは認められず、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき場合には当たらない。
実務上の射程
刑事訴訟における手続違背の「判決への影響」を判断する際、弁護人による代位的な権利行使や実質的な防御の成否を重視する枠組みとして活用できる。特に控訴審の構造上、弁護人への通知が実質的に機能していれば、本人への通知の瑕疵は治癒され得ることを示した事例である。
事件番号: 昭和27(あ)6053 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人が公判期日に出頭していた場合には、公判廷において判決宣告期日が告知されたものと解するのが相当である。公判調書に弁護人の出頭に関する記載が欠けていても、実際に出頭していた事実があれば、告知の効力を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人Aの弁護人は、原審(控訴審)の第3回公判期日に実…