いわゆる「アカハタ及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する指令」についての昭和二五年政令第三二五号違反被告事件は、講和条約発効後においては、刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
いわゆる「アカハタ及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する指令」についての昭和二五年政令第三二五号違反被告事件は講和条約発効後は免訴すべきか。
昭和20年勅令542号,昭和25年政令325号前文,昭和25年政令325号1条,昭和25年政令325号2条,昭和25・6・26附同25・7・18附マツカーサー書簡,刑訴法337条2号,刑訴法411条5号,昭和27年法律81号,昭和27年法律137号2条6号,昭和27年法律137号3条1項,憲法39条,憲法21条
判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づく指令違反の罪は、平和条約の発効により当該指令が憲法違反の規定として失効したことで、「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により、占領下の指令に基づく処罰根拠が消滅した場合、刑事訴訟法337条2号の「刑の廃止」に該当し免訴とされるべきか。特に、憲法21条に違反する内容の指令を維持することが許されるかが問題となる。
規範
「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」(刑訴法337条2号、411条5号)とは、単なる限時法の失効ではなく、既成の刑罰権を将来に向かって放棄する国家意思が認められる場合を指す。ポツダム宣言受諾に伴う占領下の特別法令については、平和条約の発効によって日本国憲法が全面的に回復した際、憲法の保障する基本的人権(21条等)に抵触するに至った規定は、実質的に刑の廃止があったものと解される。
重要事実
被告人は、昭和25年末から26年頃にかけて、連合国最高司令官の指令により発行停止とされていた「アカハタ」の後継紙である「平和のこえ」を頒布した。これが昭和25年政令325号(占領目的阻害行為処罰令)に違反するとして起訴され、下級審で有罪判決を受けたが、上告中に平和条約が発効した。
事件番号: 昭和27(あ)2868 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: その他
所謂アカハタ及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する指令についての昭和二五年政令第三二五号違反被告事件は、講和条約発効後においては刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
あてはめ
本件で適用された連合国最高司令官の指令(新聞発行停止)は、日本国憲法21条の表現の自由を侵害する内容を含んでいる。占領中は憲法の外枠で有効であったが、平和条約の発効により憲法の規範力が全面的に回復した後は、かかる憲法違反の指令を適用し続けることはできない。したがって、条約発効と同時に当該指令の罰則適用は法的根拠を失い、実質的に刑の廃止があったのと同様の事態が生じたといえる。後続の法律(昭和27年法律81号等)で効力の維持を図ることも、事後立法による処罰を禁ずる憲法の趣旨に照らし、有効な刑罰権の存続とは認められない。
結論
本件は原判決後に刑が廃止されたときに該当するため、原判決及び第一審判決を破棄し、被告人を免訴とする。
実務上の射程
限時法の失効における刑の廃止の成否に関する重要判例である。原則として限時法の自然失効は刑の廃止に当たらないが、本判決のように「法改正の動機が価値判断の変化(憲法適合性の回復等)に基づく場合」には刑の廃止を認めるという、動機説(判例の立場)の理解を示す際に活用される。
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…
事件番号: 昭和26(あ)3811 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に違反する連合国最高司令官の指令を適用する限りにおいて失効したと解されるため、同条約発効後の処罰は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は…
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
事件番号: 昭和27(あ)1708 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づく表現規制は、平和条約の発効により失効し、憲法21条に違反する状態となったため、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人らは、連合国最高司令官の指令に基づき「アカハタ」及びその類縁紙の発…