一 傷害致死罪の成立には傷害と死亡、との間の因果関係の存在を必要とするにとどまり、致死の結果についての予見は必要としないのであるから、原判決が所論傷害の結果たる致死の予見について判示しなかつたからといつて、原判決には所論理由不備の違法は存しない。 二 二人以上の者が共謀しないで、他人に暴行を加え傷害致死の結果を生ぜしめた者を知ることができない場合は、共同暴行者はいずれも傷害致死の責任を負う。
一 傷害致死罪の成立と致死の結果の予見の要否 二 二人以上の者が共謀しないで他人に暴行を加え傷害致死の結果を生じその傷害を生ぜしめた者を知ることができない場合の罪責
刑法205条1項,刑法207条,旧刑訴法360条1項
判旨
傷害致死罪の成立には、傷害と死亡との間の因果関係が必要とされるにとどまり、死の結果に対する予見可能性は不要である。
問題の所在(論点)
傷害致死罪の成立に、致死の結果に対する予見(予見可能性)が必要とされるか。また、共犯関係が認定できない場合に刑法207条を適用できるか。
規範
傷害致死罪(刑法205条)は、傷害の結果的加重犯である。その成立には、傷害行為と死亡の結果との間に因果関係が存在することを要するが、致死の結果に対する予見(予見可能性)は必要とされない。
重要事実
被告人外2名が被害者に対して暴行を加え、傷害を負わせた。その結果、被害者は死亡するに至ったが、誰の暴行によってその傷害が生じたのかを特定することができなかった。原判決は、死亡の結果に対する予見について判示することなく傷害致死罪の成立を認め、また刑法207条(同時傷害の特例)を適用した。
あてはめ
傷害致死罪は基本となる傷害罪から重い結果が発生したことにより処罰が加重される類型である。本件において、原判決は死の結果に対する予見について判示していないが、傷害と死亡との間に因果関係がある以上、傷害致死罪の構成要件を充足する。また、二人以上の者が暴行を加え、傷害を負わせた者が不明である場合には、刑法207条が適用されるため、原判決が同条を適用して傷害致死罪の成立を認めたことに擬律錯誤の違法は認められない。
結論
傷害致死罪の成立に死の結果の予見は不要であり、同時傷害の特例(刑法207条)の適用により傷害致死罪の罪責を負う。
実務上の射程
結果的加重犯において重い結果に対する過失(予見可能性)を不要とする判例法理を端的に示したものである。司法試験においては、結果的加重犯の成否を論じる際の前提として、基本犯の故意と結果との因果関係があれば足りることを示す際に引用すべき標準的な判例である。
事件番号: 昭和35(あ)2042 / 裁判年月日: 昭和36年11月21日 / 結論: 棄却
一 証人の供述中分離することができる部分があるときは、その一部を採り、他の部分を捨てても差支えなく、また、多数の証拠のうち一部において相互に牴触するものがあつても、論理法則または実験則に反しない限り、その全部を綜合して事実を認定しても差支えないものである。(昭和二三年(れ)第一三一二号同二四年二月二四日第一小法廷判決、…
事件番号: 平成27(あ)703 / 裁判年月日: 平成28年3月24日 / 結論: 棄却
1 同時傷害の特例を定めた刑法207条は,共犯関係にない二人以上が暴行を加えた事案において,検察官が,各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること及び各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと,すなわち同一の機会に行われたものであることの証明をした場合,各行為者において,…