当該審級における公判廷における自白は、所謂憲法三八条三項にいわゆる本人の自白に含まれないと解すべきことは、当裁判所屡似の判例とするところであるから、刑事判決書においても必ずしもかかる公判廷における自白以外の証拠を明示しなければならないものではない。されば刑訴施行法一三条に基く旧刑事訴訟法事件の控訴審等における審判の特例に関する規則第五条、第六条において同条項規定の如き規定をしたからといつて前記憲法の条項に反する道理がない。
旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第五条及び第六条は憲法第三八条第三項に違反するか
旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則5条,旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則6条,憲法38条3項
判旨
当該審級における公判廷での自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠を要しない。したがって、公判廷自白のみに基づき、特例規則に従って事実を認定しても憲法違反とはならない。
問題の所在(論点)
「当該審級の公判廷における被告人の自白」が、憲法38条3項に規定する補強証拠を必要とする「本人の自白」に含まれるか。また、これに基づき簡略化した証拠説明を行う特例規則が憲法に反するか。
規範
憲法38条3項が「本人の自白」のみを証拠として有罪とされないと規定するのは、不当な強制による自白や誤判を防止する趣旨である。しかし、裁判官の面前で行われる「当該審級の公判廷における自白」は、その任意性と信憑性が高度に保障されているため、同項にいう「自白」には含まれず、単独で有罪判決の基礎とすることができる。
重要事実
被告人が刑事事件について控訴したところ、控訴審において、旧刑事訴訟法事件の控訴審等における審判の特例に関する規則(以下「特例規則」)に基づき、控訴申立人が不服を申し立てていない事項について重ねて証拠調べを行うことなく、原判決の認定事実を引用して有罪判決が下された。これに対し弁護人は、公判廷外の補強証拠を明示せずになされた当該判決は、憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は特例規則5条および6条に基づき、被告人が不服のない事項について証拠調べを省略し、原判決の認定事実を引用することで事実摘示と証拠説明を行っている。憲法38条3項の「本人の自白」には当該審級の公判廷における自白は含まれないため、判決書において公判廷自白以外の補強証拠を必ずしも明示する必要はない。したがって、特例規則に従って公判廷での態度や原認定を基礎とした判断は、適法な証拠能力および証明力の評価に基づくものであるといえる。
結論
当該審級の公判廷における自白は憲法38条3項の「自白」に含まれないため、これに基づいて事実を認定する手続は憲法に違反しない。
実務上の射程
司法試験においては、補強法則(刑訴法319条2項)の適用範囲を論ずる際の重要判例である。公判廷自白が補強証拠を不要とする理由として、裁判官の面前での供述であり、人権侵害や誤判の恐れが少ないという実質的根拠を提示する際に引用する。ただし、現在は刑訴法319条2項により「公判廷における自白であるとないとを問わず」補強証拠が必要と明文で定められているため、本判例は憲法解釈としての射程に留まる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(れ)1776 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における自白は、憲法38条3項にいう「自白」に含まれないため、補強証拠がなくとも当該自白のみで有罪判決を言い渡すことが可能である。また、被害者の盗難被害始末書等は自白の補強証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人が窃盗等の罪に問われた事案において、原判決の一部事実については被告人の自白のほ…