原判決は第一審判決を破棄し自ら判決を為すに当り、控訴事実中強盗の点につき、訴因罰条の変更手続を経ることなく、恐喝の事実を認定していること所論の通りであるが、元来、訴因又は罰条の変更につき、一定の手続が要請される所以は、裁判所が勝手に、訴因又は罰条を異にした事実を認定することに因つて、被告人に不当な不意打を加え、その防禦権の行使を徒労に終らしめることを防止するにあるから、かかる虞れのない場合、例えば、強盗の起訴に対し恐喝を認定する場合の如く、裁判所がその態様及び限度において訴因たる事実よりもいわば縮少された事実を認定するについては、敢えて訴因罰条の変更手続を経る必要がないものと解するのが相当である。
訴因又は罰条変更手続の趣旨と強盗の起訴に対し恐喝を認定する場合に訴因罰条変更手続の要否
刑訴法312条,刑訴規則209条
判旨
訴訟手続の変更が被告人の防御権行使に不利益を及ぼす虞れがない場合には、裁判所は訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定できる。強盗の訴因に対し、その事実を縮小した態様である恐喝の事実を認定することは、不意打ちとならないため訴因変更を要しない。
問題の所在(論点)
裁判所が訴因(強盗)と異なる事実(恐喝)を認定する場合に、刑事訴訟法312条1項の訴因変更手続を要するか。特に、認定事実が訴因事実の一部(縮小認定)である場合の判断基準が問題となる。
規範
訴因又は罰条の変更手続が要請される趣旨は、裁判所が訴因と異なる事実を認定することで被告人に不当な不意打ちを与え、その防御権の行使を徒労に終わらせることを防止する点にある。したがって、被告人の防御権に不利益を与える虞れがない場合、特に認定事実が訴因たる事実に包含され、その態様及び限度において縮小された事実を認定する場合には、訴因変更手続を経る必要はない。
重要事実
被告人は強盗の訴因で起訴されたが、原審(控訴審)は、訴因変更の手続を経ることなく、強盗の事実よりも態様の軽い恐喝の事実を認定した。これに対し弁護人は、訴因変更手続を経ずに異なる事実を認定したことは違法であり、先行する高等裁判所の判例とも相反すると主張して上告した。
あてはめ
強盗の事実には、その暴行・脅迫の程度を減じた恐喝の事実が内包されている。強盗の訴因で起訴された被告人にとって、より軽微な恐喝の事実が認定されることは、訴因たる事実よりも態様および限度において「縮小された事実」を認定されることに他ならない。このような場合には、被告人に不当な不意打ちを加え、防御権の行使を妨げる虞れがないといえる。したがって、訴因変更手続を経ずに恐喝罪を認定した原判決に手続上の違法は認められない。
結論
強盗の起訴に対し、訴因変更手続を経ることなく恐喝の事実を認定することは適法である。
実務上の射程
いわゆる「縮小認定」の可否に関するリーディングケースである。答案上は、訴因変更の要否(312条1項)について、原則として「識別(特定)に不可欠な事実」または「一般的・抽象的に被告人の防御に重要な事実」に変更がある場合に必要と述べた上で、例外的に被告人の防御権に実質的な不利益を与えない「縮小認定」に当たる場合は不要である、と論じる際に使用する。
事件番号: 昭和26(れ)1696 / 裁判年月日: 昭和26年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に該当せず、また記録を精査しても刑訴法411条の職権破棄事由には当たらないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人側が原判決の認定に事実誤認があるとして上告を申し立てた事案。具体的な犯罪事実や手続的経緯の詳細は、本判決文からは不…