控訴裁判所が、強盗の起訴に対し強盗幇助と認定した第一審判決を破棄して、自ら恐喝と認定するについては訴因、罰条の変更手続を経ることを要しないものと解すべきである。
訴因罰条の変更を必要としない一事例
刑法236条,刑法62条,刑法249条,刑訴法312条
判旨
強盗罪の起訴に対し、裁判所が訴因変更手続を経ることなく恐喝罪と認定することは、刑事訴訟法上適法である。
問題の所在(論点)
強盗罪として起訴された事実に対し、訴因変更手続を経ることなく恐喝罪を認定することは、刑事訴訟法312条1項に照らし許されるか。
規範
訴因の変更(刑事訴訟法312条1項)を要するか否かは、原則として、審判対象の画定に不可欠な事実が異なるか、または被告人の防御にとって重要な事項であるかによって判断される。もっとも、縮減認定(訴因に含まれる事実の一部を認定すること)が可能であり、かつ、構成要件的に重なり合いが認められ、被告人の防御に実質的な不利益を生じさせない場合には、訴因変更の手続を経る必要はない。
重要事実
被告人が強盗罪で起訴された事案において、第一審は強盗幇助と認定した。これに対し控訴審は、第一審判決を破棄した上で、自ら恐喝罪として有罪を認定した。この際、検察官による恐喝罪への訴因変更手続は経られていなかったため、弁護人は訴訟法違反(違憲・法令違反)を主張して上告した。
あてはめ
強盗罪と恐喝罪は、いずれも財物奪取を目的とし、暴行・脅迫を手段とする点で共通し、手段の強弱において段階的な差異があるに過ぎない。強盗罪の訴因には「相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫」が含まれており、恐喝罪の「反抗を抑圧するに至らない程度の恐喝(脅迫等)」は、強盗罪の事実の中に当然に含まれている(縮減認定の関係にある)。したがって、強盗罪として防御を尽くしている被告人にとって、より軽微な恐喝罪を認定されることは、不意打ちとはならず防御権の侵害も認められない。
結論
強盗の起訴に対し、訴因変更手続を経ずに恐喝罪と認定することは適法であり、訴訟法違反には当たらない。
実務上の射程
本判決は、構成要件的に重なり合いのある罪種間(強盗と恐喝、強盗と窃盗など)における縮減認定の可否を示す基準となる。答案上は、訴因変更の要否の原則論を述べた後、本判決を根拠に「構成要件的重なり合い」と「防御の不利益の欠如」を指摘し、訴因変更なしでの認定を肯定する流れで活用する。ただし、殺人と傷害致死のように、被告人の防御方針が大きく異なる場合には慎重な検討を要する点に留意すべきである。
事件番号: 昭和37(あ)1318 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員を喝取したとの恐喝の起訴事実に対し、日時、場所、手段方法等の点においてほぼ内容を同じくする犯罪事実を、いわゆる困惑恐喝として認定することは、訴因変更手続を経ずに行うことができる。 第1 事案の概要:被告人らは、被害者を畏怖せしめて金員を喝取したとして恐喝罪の訴因で起訴された。これに対し原審(第…
事件番号: 昭和28(あ)914 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
恐喝として起訴されたものを脅迫と認定しても、脅迫をしたという基本事実に変更がなく、かつ、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずるおそれのないものであるから訴因変更の手続を経る必要はない。
事件番号: 昭和23(れ)1879 / 裁判年月日: 昭和24年5月7日 / 結論: 棄却
しかし犯人によつてなされた暴行又は脅迫が社會通念上相手方の反抗を抑壓する程度のものであつて、右暴行又は脅迫と財物の奪取との間に因果關係がある以上は、被害者自身は單に畏怖されたに止つたとしても又被害者自ら財物を交付したとしても強盜罪が成立するものであつて、恐喝罪とはならないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三…