累犯加重をするにあたり再犯を三犯と誤つて刑法第五九条を適用しても、刑訴四一一条を適用すべき違法とは認められない。
刑訴第四一一条にあたらない一事例
刑法56条,刑法57条,刑法59条,刑訴法411条
判旨
仮出獄中の犯罪は刑法56条1項の累犯には当たらないが、他に刑の執行終了から5年以内の前科がある場合には累犯として処断される。また、三犯以上の累犯であっても、その処断刑は再犯の例(同法57条)に従うため、適用法条に多少の過誤があっても直ちに判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
仮出獄中の犯罪が刑法56条1項の累犯に該当するか。また、複数の前科のうち一方が累犯要件を満たし、他方が満たさない場合に、三犯以上の規定(刑法59条)を適用して累犯加重を行うことの適否が問題となる。
規範
刑法56条1項の累犯(再犯)が成立するためには、懲役の執行を終了し、又はその執行の免除を得た日から5年以内に、更に罪を犯し、有期懲役に処せられることを要する。したがって、仮出獄中の犯罪は「執行を終了」した後の犯罪ではないため、当該前科との関係では累犯とはならない。ただし、複数の前科がある場合に、そのうち一つでも上記要件を満たせば累犯として処断され、その刑期は同法57条により当該罪について定めた刑の長期の2倍以下となる。
重要事実
被告人には、前科として①懲役3年(昭和25年7月25日執行終了)と②懲役1年6月(仮釈放中、満了予定日は昭和26年1月20日)があった。被告人は、②の刑の仮出獄中に本件犯罪を犯した。第一審は、①および②の両方を累犯の前科として認定し、刑法56条、57条および三犯以上の規定である59条を適用して処断した。
あてはめ
本件犯罪時、前科②については仮出獄中であり「執行を終了した日」から5年以内という要件を満たさないため、②との関係では累犯は成立しない。しかし、前科①については昭和25年7月25日に執行を終了しており、本件犯罪はその5年以内に行われたものであるから、①との関係で累犯(再犯)の要件を充足する。第一審が②についても累犯前科として59条を適用した点は失当であるが、刑法59条は三犯以上であっても57条(再犯の例)によると規定しているため、結局のところ57条による刑の加重は正当である。
結論
仮出獄中の犯罪は累犯にならない。しかし、他に執行終了から5年以内の前科があれば累犯として処断される。適用法条に一部過誤があっても、再犯としての加重(57条)の範囲内であれば、判決を破棄すべき著しい正義反背があるとは認められない。
実務上の射程
累犯の成否を検討する際、各前科について「執行終了」の有無を厳格に判断すべきことを示す。答案上では、仮釈放中の犯罪について累犯の成否が問われた際、56条1項の文言(執行を終了した日)に基づき累犯成立を否定しつつ、他の前科との関係で加重が可能か検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和25(あ)3110 / 裁判年月日: 昭和27年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の累犯加重の制度は、前科があることを理由に重ねて処罰するものではなく、再犯の反社会性や強い責任を考慮して現に行われた犯罪に対する刑を重くするものであり、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、第一審判決が刑法の規定に基づき累犯加重の刑を科した。こ…
事件番号: 昭和52(あ)1323 / 裁判年月日: 昭和52年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】累犯加重を定める刑法56条1項、57条の規定は、法の下の平等を定める憲法14条1項および二重処罰を禁止する憲法39条後段に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、以前に懲役刑に処せられた前科があったが、その執行終了の日から5年以内にさらに罪を犯した。裁判所はこれを刑法56条1項の累犯に当たると判…
事件番号: 昭和26(れ)2450 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
被告人が本件起訴に係る強盗関係の犯行後一年以上経過した後に原判決指摘の如き前科にかゝる強盗行為を更に犯したことが明白であつてしかも被告人は、本件起訴に係る犯行により逮捕された後昭和二一年四月二六日係検察官に対し深く前非を悔い、真人間となつて更正することを誓つているような場合には両犯罪の間に連続犯の関係を認めるべきではな…
事件番号: 昭和27(あ)1043 / 裁判年月日: 昭和28年7月18日 / 結論: 棄却
前科が累犯加重の理由となるのは、前後の罪の刑がいずれも懲役刑であつて、前の罪の刑につき執行を終り又は執行の免除があつた日から五年以内にさらに後の罪を犯し懲役刑に処すべき場合であれば足りるのであり、後の罪につき右の五年以内に有罪判決の言渡があつたことを要するものでないと解するを相当とする。さればこの趣旨に出でた原判決は正…