公判の審理に関与しなかつた裁判官が原判決に関与した場合は、判決に影響を及ぼすべき法令違反であつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合にあたる。
公判の審理に関与しなかつた裁判官が判決に関与した違法と刑訴第四一一条の適用
刑訴法411条1号,刑訴法43条1項,刑訴規則54条
判旨
判決に関与する裁判官は公判の審理に関与した者でなければならず、審理に関与していない裁判官が判決に関与した場合は、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する重大な違法となる。
問題の所在(論点)
公判の審理に関与していない裁判官が判決に関与した場合、当該判決に破棄されるべき違法(刑事訴訟法411条等の事由)が認められるか。
規範
裁判官は、直接主義の観点から、自ら審理に関与した事件についてのみ判決を行う権限を有する。したがって、公判の審理に関与していない裁判官が判決に関与することは、刑事訴訟法上の重大な手続違法を構成し、原則として原判決の破棄事由(同法411条等)に該当する。
重要事実
本件の控訴審において、昭和26年1月30日の公判には、裁判長判事富田仲次郎、判事棚木靱雄、判事網田覚一の3名が列席して審理が行われた。その後、審理が更新された形跡はなかった。しかし、宣告された原判決の書面には、審理に関与した富田・棚木両判事のほかに、審理に関与していない入江菊之助判事が署名押印していた。
あてはめ
公判調書の記載によれば、審理には網田判事が関与していたが、判決書には入江判事が署名押印している。審理の更新が行われていない以上、判決に関与すべきは審理を担当した裁判官に限られる。そのため、審理に関与していない入江判事が判決に関与したことは明らかな手続違法である。このような違法は、裁判の公正と適正手続の根幹に関わるものであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると評価される。
結論
公判の審理に関与しない裁判官が判決に関与した違法があるため、原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
裁判官の交代があった場合に更新手続を経ずに判決を行うことや、合議体の構成員に誤りがある場合の違法性を論じる際の根拠となる。実務上は絶対的控訴理由(刑訴法377条1号)にも通じる法理であり、直接主義・口頭主義の重要性を示す事案として位置付けられる。
事件番号: 昭和27(あ)1225 / 裁判年月日: 昭和28年4月17日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決に関与した裁判官が、判決の基本となった公判の審理に関与した者であることは、公判調書の記載により明らかであり、これに異議がなければ、判決に関与しなかった裁判官が関与したという違法はない。 第1 事案の概要:被告人が公文書偽造等の罪で起訴された事案において、第一審判決原本には三名の裁判官が署名押印…
事件番号: 昭和28(あ)3564 / 裁判年月日: 昭和30年6月14日 / 結論: 棄却
所論判事は、本件犯罪の捜査、第一審、第二審を通じ、ただ第二審第二回公判の判決宣告に関与したのみに過ぎない。従つて、同判事が関与した民事裁判が本件第一審判決における事実認定の証拠に採用されたからといつて、同判事が除斥されるべき職務の執行をしたものということはできない。