一 団体等規制令一〇条による法務総裁の出頭要求命令の効力についての争訟は日本の裁判所が裁判権を有しないと解すべきことは昭和二五年(オ)一四七号同年七月五日大法廷判決(民事判例集四巻七号二六四頁以下)及び昭和二三年(れ)一八六二号昭和二四年六月一三日大法廷判決(刑事判例集三巻七号九七四頁以下)の趣旨に徴して明らかなところであるから、被告人Aに対する本件出頭要求命令を無効なりと主張する各論旨は採用することができない。 二 刑訴第三二一条第一項第二号の規定に供述者が供述することができないときとしてその事由を掲記しているのは、その供述者を裁判所において証人として尋問することを妨ぐべき障碍事由を示したもので、これと同様またはそれ以上の事由の存する場合において同条所定の書面に証拠能力を認めることを妨げるものではない。 三 本件におけるが如く、Bが第一審裁判所に証人として喚問されながらその証言を拒絶した場合にあつては、検察官の面前における同人の供述につき被告人に反対尋問の機会を与え得ないことは右規定にいわゆる供述者の死亡した場合と何等選ぶところはないのであるから、原審が所論のBの検察官に対する供述調査の記載を、事実認定の資料に供した第一審判決を是認したからといつて、これを目して憲法第三七条第二項に違反すると即断することは出来ない。
一 団体等規制令第一〇条第三項による法務総裁の出頭要求の効力に関する裁判所の審判権限 二 刑訴第三二一条第一項第二号の法意 三 証人が証言を拒む場合と刑訴第三二一条第一項第二号の適用
団体等規正令10条1項3項,団体等規正令13条3号,刑訴法321条1項2号,刑訴法146条,刑訴法147条,憲法37条2項
判旨
証人が公判期日で証言を拒絶したことにより、被告人に反対尋問の機会が与えられなかった場合であっても、そのことが刑訴法321条1項2号の「供述することができないとき」に準ずる事由に該当するならば、当該証人の検察官面前調書に証拠能力を認めることは憲法37条2項に反しない。
問題の所在(論点)
証人が公判期日において証言を拒絶した場合、刑訴法321条1項2号の「供述することができないとき」に該当し、被告人に反対尋問の機会がないまま検面調書に証拠能力を認めることが憲法37条2項に適合するか。
規範
憲法37条2項は、被告人に審問の機会を与えない証言の証拠能力を絶対的に否定する趣旨ではない。やむを得ない事由により公判廷での尋問が妨げられ、反対尋問の機会を与え得ない場合には、その供述録取書を証拠とすることも憲法上許容される。刑訴法321条1項2号にいう「供述することができないとき」とは、供述者を裁判所において証人として尋問することを妨げる障害事由を指す。したがって、証言拒絶等の事由が死亡等と同等、あるいはそれ以上に供述獲得を困難にする場合には、同号を準用または類推して証拠能力を認めることができる。
重要事実
被告人らの刑事事件において、検察官は証人Bの検察官面前調書(検面調書)を証拠として請求した。Bは第一審公判に証人として出頭したが、本件公訴事実の存否に関する重要な事項について証言を拒絶した。このため、被告人側はBに対して当該調書の内容に関する反対尋問を行う機会を得られなかった。第一審および原審は、この調書を事実認定の資料として採用したため、被告人側が反対尋問権を侵害する憲法違反であるとして上告した。
あてはめ
証人が証言を拒絶している状況は、現に被告人に反対尋問の機会を与え得ないという点において、同号に列挙された死亡の場合と何ら変わるところがない。また、国外にいる場合と比較しても、供述を得ることができないという意味ではより強力な障害といえる。本件においてBは証人喚問を受けながら証言を拒絶しており、その後その意思を翻した形跡も認められない。したがって、Bは「供述することができないとき」と同等以上の事由があるといえ、反対尋問の機会がなくとも当該検面調書の証拠能力を認めることは適法である。
結論
証言拒絶により反対尋問が不可能な場合も、刑訴法321条1項2号の「供述することができないとき」に含まれ、当該検面調書を証拠とすることは憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号)の「供述不能」の範囲を、明文の事由以外にも広く「裁判所での尋問を妨げる障害事由」として解釈する際の根拠となる。答案上は、証言拒絶、記憶喪失、あるいは証言拒絶権の行使等の場面で、被告人の反対尋問権(憲法37条2項)との調整を論じる際の規範として用いる。
事件番号: 昭和29(あ)1628 / 裁判年月日: 昭和31年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述者が所在不明であるため反対尋問が不可能な場合であっても、刑訴法321条1項1号の要件を満たすときは、憲法37条2項に反せず証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人らは暴行傷害の罪で起訴された。第一審裁判所は、重要な供述者である証人Aを再喚問しようと試みたが、種々の調査の結果、その所在が…