検察官より検察官の面前における供述録取書面について刑訴第三二一条第一項第二号前段により証拠調の請求があつた場合においては、裁判所は、弁護人から異議があつてもこれが証拠調を許容すべきものである。
刑訴第三二一条第一項第二号前段にあたる書面の証拠調請求却下の違法
刑訴法298条,刑訴法321条1項2号,刑訴法411条1号
判旨
刑事訴訟法321条1項2号前段にいう「供述することができないとき」とは、裁判所が証人として喚問しながら証言を拒絶した場合も含まれる。このような場合、死亡や国外居住と同様に供述を得ることが不可能な障害事由があるといえるため、検察官面前調書の証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
公判期日において証人として喚問された者が証言を拒絶した場合、刑事訴訟法321条1項2号前段の伝聞例外要件である「供述することができないとき」に該当するか。
規範
刑事訴訟法321条1項2号前段が「供述者が……供述することができないとき」として事由を掲げている趣旨は、証人として尋問することを妨げる客観的な障害事由を示す点にある。したがって、裁判所に証人として喚問されながら正当な理由なく証言を拒絶した場合は、供述者の死亡や国外居住の場合と同様、あるいはそれ以上に強く「供述を得ることができない」場合に該当すると解すべきである。
重要事実
被告人らの物価統制令違反および収賄被告事件において、検察官は重要参考人ら(鈴木、原田、山岡)の検察官面前における供述調書について、刑訴法321条1項2号に基づき証拠調べを請求した。これに対し、弁護人は異議を申し立て、第一審裁判所は刑訴法319条および322条を理由にこれを排除し、請求を却下した。しかし、記録によれば、当該供述者らはいずれも第一審の公判廷において証人として喚問されたが、事件に関する事項について証言を拒絶し、供述を行わなかった事実が認められた。
あてはめ
本件において、供述者らは実際に公判廷に喚問されているものの、証言を拒絶して一切の供述を行っていない。この状態は、物理的に所在しない死亡や国外居住の場合と比較しても、公判廷において供述を得ることができないという点では何ら選ぶところがない。それゆえ、実質的な供述不能事由が存在すると評価される。したがって、第一審裁判所が「証言拒絶」を「供述不能」にあたらないとして証拠請求を却下した判断は、法の解釈を誤った違法なものであるといえる。
結論
証人が公判廷で証言を拒絶した場合は、刑訴法321条1項2号前段の「供述することができないとき」に含まれる。したがって、当該検察官面前調書には証拠能力が認められ、証拠調べを却下した原判決および第一審判決は破棄を免れない。
実務上の射程
伝聞例外における「供述不能」の範囲を物理的不在だけでなく、心理的・態度的要因による供述欠如にまで広げた重要な判例である。答案上は、証言拒絶以外にも、記憶喪失(忘却)が実質的に証言拒絶と同視できる場合に、本判例の理屈を援用して2号前段の適用を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和44(あ)746 / 裁判年月日: 昭和44年12月4日 / 結論: 棄却
証人が公判期日に証言を拒んだときは、刑訴法三二一条一項一号前段にいう「公判期日において供述することができないとき」にあたる。
事件番号: 昭和26(あ)2357 / 裁判年月日: 昭和27年4月9日 / 結論: 棄却
一 団体等規制令一〇条による法務総裁の出頭要求命令の効力についての争訟は日本の裁判所が裁判権を有しないと解すべきことは昭和二五年(オ)一四七号同年七月五日大法廷判決(民事判例集四巻七号二六四頁以下)及び昭和二三年(れ)一八六二号昭和二四年六月一三日大法廷判決(刑事判例集三巻七号九七四頁以下)の趣旨に徴して明らかなところ…
事件番号: 昭和26(れ)654 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述が検察事務官の強制に基づくものであるとの主張があっても、記録上その強制の事実が認められない限り、当該供述録取書の証拠能力は否定されない。自白の任意性に疑いがない以上、憲法違反の問題も生じない。 第1 事案の概要:被告人Aは、第一審および原審の公判廷において、本件の検察事務官による聴取書(供述録…