刑法第一九七条第一項後段の請託とは、公務員に対して、その職務に関して一定の行為を行うことを依頼することであつて、その依頼が不正な職務行為の依頼であると、正当な職務行為の依頼であるとを問わない。
賄賂罪における請託の意義
刑法197条1項後段
判旨
収賄罪における「請託」とは、公務員に対して一定の職務行為を行うことを依頼することであり、その依頼が不正な行為か正当な行為かを問わない。公務員の職務の公正を維持するためには、正当な職務行為に対しても賄賂による買収を許すべきではないからである。
問題の所在(論点)
刑法197条の収賄罪における「請託」の内容について、不正な職務行為の依頼に限定されるか、それとも正当な職務行為の依頼も含まれるか。また、請託の定義と保護法益の関係が問題となる。
規範
刑法197条1項後段(受託収賄罪等)にいう「請託」とは、公務員に対し、その職務に関し一定の職務行為をなすべきことを依頼することをいう。その依頼の内容が、不正な職務行為であると正当な職務行為であるとを問わない。また、請託を受けて賄賂を収受した以上、賄賂の収受が職務行為の事前であるか事後であるかは、犯罪の成否に影響しない。
重要事実
被告人は公務員であったところ、職務に関する事項について請託を受け、賄賂を収受した。弁護人は、収賄罪の保護法益は職務の公正であり、請託とは「職務の公正を害するおそれのある不法な依頼」に限定されるべきであって、正当な職務行為の依頼を受けて賄賂を収受しても職務の公正は害されないため、請託に該当しないと主張した。
あてはめ
収賄罪は公務員が職務に関して賄賂を収受することで成立し、必ずしも不正な行為をなすことを要件としない(大審院判例踏襲)。保護法益たる職務の公正を維持する観点からは、たとえ正当な職務行為であっても、それが賄賂によって買収されることは許されない。したがって、職務行為の正当・不当を問わず、公務員が一定の職務行為を依頼されて賄賂を収受した事実は、同条後段の構成要件を充足するといえる。
結論
請託は正当な職務行為の依頼であっても成立する。被告人の行為には請託が認められ、受託収賄罪が成立する。
実務上の射程
受託収賄罪(刑法197条1項後段)や加重収賄罪(同197条の3第1項)の検討において、「請託」の意義を定義する際に用いる。答案では「保護法益である職務の公正及びそれに対する社会の信頼(不可買収性)の観点から、不正な行為の依頼に限定されない」と論証するのが一般的である。
事件番号: 昭和32(あ)1490 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
大蔵事務官として南九州財務局長官官房総務課文書係である者は、同財務局(理財部金融課)の行う金融機関の業務および財産の検査についても、その日時の事前内報をしてはならない職務を有する。