一 被告人が在延する公判廷における口頭の罰条追加の場合には裁判所が特に被告人に対しこれが通知の手続を執る必要のないことは多言を要しないし、また、犯罪事実認定の資料となるべき医師の診断書は刑訴法第三二一条、第三二六条の要件あるを以て足り(本件では同第三二六条の同意あること記録上明白である)、同第二七八条、刑訴規則第一八三条所定の事実を記載するの必要ないこと勿論であるから、刑訴法第四一一条を適用すべきものとも認められない。 二 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対しそれぞれ暴行を加え同人等に各傷害を与えた場合は、甲、乙に対する各強盗傷人罪の併合罪となる。
一 被告人の在延する公判廷において口頭で罰条を追加する場合に特に被告人に通知手続を執ることの要否 二 犯罪事実認定の資料となる医師の診断書の採証要件 三 一個の強盗行為の手段として甲、乙に対してそれぞれ暴行を加え、同人等に各傷害を与えた場合の罪責
刑訴法312条,刑訴法321条,刑訴法411条,刑訴法326条,刑訴法278条,刑訴規則183条,刑法240条前段,刑法45条前段
判旨
強盗傷人罪の罪数については、犯人の犯意の数のみによって決すべきではなく、数人の被害者に対しそれぞれ暴行を加えて傷害を負わせた場合には、被害者の数に応じた数個の強盗傷人罪が成立し、併合罪となる。
問題の所在(論点)
数人の被害者に対し、同様の機会に暴行・傷害を負わせる強盗傷人行為を行った場合、犯罪の個数はどのように決定されるべきか。犯意の単一性を基準とすべきか、被害者の数を基準とすべきかが問題となる。
規範
犯罪の個数は、犯人の内心に生ずる犯意の度数のみによって決すべきではなく、行為の態様や被害の数等の客観的事実を考慮して判断すべきである。特に強盗傷人罪のように、個人の生命・身体という専属的法益を保護する罪種においては、被害者の数に応じて犯罪が成立する。
重要事実
被告人らは、共謀の上、被害者CおよびDの両名に対し、それぞれ判示の暴行を加え、よって両名に対しそれぞれ判示の傷害を負わせるという強盗傷人行為に及んだ。第一審は、これら一連の行為を2個の強盗傷人罪の併合罪として処断したところ、被告人側が犯罪の個数は犯意の度数により決すべきであるとして、法の適用を誤ったものであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人らは被害者CおよびDの2名に対して個別に暴行を加え、両名に負傷させている。犯罪の個数は単なる主観的な犯意の数(犯意が一つであったか否か)のみで決まるものではない。個人の身体的完全性を侵害する強盗傷人罪の性質に鑑みれば、別々の被害者に対して暴行・傷害の結果が発生している以上、客観的に2個の犯罪が成立していると評価される。したがって、Cに対する強盗傷人罪とDに対する強盗傷人罪が別個に成立する。
結論
2名の被害者それぞれに対し暴行・傷害を加えた本件行為について、2個の強盗傷人罪の併合罪として処断した原判断に法の適用の誤りはない。
実務上の射程
本判決は、生命・身体という専属的法益を侵害する罪(強盗傷人罪等)においては、被害者の数によって罪数が決定されるという原則(「被害者数基準」)を確認したものである。答案上は、数人の被害者がいる事例において、罪数論の箇所で「犯意が単一であっても、専属的法益を侵害する本罪においては被害者の数ごとに罪が成立する」と論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(れ)599 / 裁判年月日: 昭和26年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯において、共謀者の一人が強盗の現場で財物強取の手段として暴行を加え、被害者に傷害を与えた場合、他の共謀者もその傷害の結果について強盗傷人罪の刑事責任を負う。 第1 事案の概要:被告人AおよびCは、Bら計4名と共謀して強盗に及んだ。強盗の現場において、共謀者の一人であるBが、財物を強取す…