舊勞働組合法第一條第二項の規定は勤勞者の團体交渉においても刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行爲が行われた場合にまでその適用があることを定めたものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三一九號同二四年五月一八日大法廷判決判例集第三卷第七七二頁以下參照)
舊勞働組合法第一條第二項の法意
憲法28條,昭和20年法律51號勞働組合法1條
判旨
労働争議や団体交渉の場であっても、刑法上の暴行罪や脅迫罪に該当する行為が行われた場合には、労働組合法上の正当行為としての免責は受けられない。
問題の所在(論点)
労働争議および団体交渉の際に行われた脅迫的言辞や威圧的行為が、労働組合法1条(正当行為)により刑事上の違法性が阻却されるか。
規範
労働組合法(旧法1条2項)による刑法上の免責規定は、勤労者の団体交渉において刑法所定の暴行罪または脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまでその適用があることを定めたものではない。
重要事実
被告人らは労働争議中の団体交渉において、約26時間にわたり睡眠を許さず交渉を継続。多数の組合員の威力を背景に、会社代表らの社宅へ隠匿物資の調査に行くと決議し、さらに「壇上にいる限りは生命を保障するが、降りれば保障できない」旨を告げるなど、交渉を避けようとすれば身体等に危害を加えかねない気勢を示して脅迫した。
事件番号: 昭和26(れ)1209 / 裁判年月日: 昭和27年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】争議行為に伴う暴行・脅迫や不法監禁等の行為は、正当な争議行為の範域を逸脱するものであり、刑法35条及び旧労働組合法1条2項(現1条2項)による正当行為として免責されない。 第1 事案の概要:労働組合関係者らによる争議行為に際し、他者に対して暴行・脅迫(判示第一)及び不法監禁(判示第二)が行われた。…
あてはめ
被告人らの行為は、多数の組合員の威力を利用し、約26時間の不眠不休の交渉を強い、生命への危害を示唆して脅迫したものである。このような行為は、たとえ組合員の生活権擁護という目的や交渉継続の熱意があったとしても、刑法上の脅迫罪に該当する態様である。したがって、正当な団体交渉の範囲を逸脱しており、労働組合法上の正当行為とは認められない。
結論
被告人らの行為は正当行為には当たらず、暴力行為等処罰に関する法律違反および脅迫罪が成立する。
実務上の射程
労働基本権の行使であっても、暴力や脅迫といった実力行使に及ぶことは許されないという限界を示した。答案上は、刑法35条(正当業務行為)や労組法1条2項の適用範囲を論ずる際、行為態様の相当性を欠く例として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和26(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和26年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項による刑罰不適用は、同条1項の目的を達成するための正当な行為にのみ認められる。団体交渉において脅迫罪に該当するような正当な範囲を逸脱した行為については、同項の適用はない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の団体交渉の場において、交渉相手に対して脅迫罪に該当する行為を行った。…
事件番号: 昭和41(あ)2215 / 裁判年月日: 昭和42年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合員による集団抗議活動に伴う行為であっても、暴力的な脅迫や強制を伴うものは、憲法28条及び労働組合法1条2項の正当な範囲を逸脱し、刑法上の違法性が阻却されない。 第1 事案の概要:被告人ら組合員約80名は、使用者側が抗議状況を写真撮影したことに憤慨。被告人らは約18名と共謀して室内に乱入し、…
事件番号: 昭和35(あ)2920 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による行為であっても、多数で長時間取り囲み、脅迫を用いて相手方の自由意思を抑圧し、義務のないことを行わせる行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱し、違法性を有する。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の活動として、他の多数の組合員らと共に長時間にわたって被害者Aを取り囲んだ。その際、被告人…
事件番号: 昭和24(れ)3057 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項の刑事免責は、同条1項の目的達成のためにされた正当な行為にのみ認められるものであり、団体交渉等の際に行われた刑法上の暴行罪や脅迫罪に該当する行為には適用されない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働争議における要求貫徹のための団体交渉の場において、多衆の威力を示し、住居侵入、暴行…