一 統制額の超過販賣に關する物價統制令違反の罪は統制額を超えて賣買すれば成立するものであるから、原判示のように、被告人が統制額を超えて判示玄米又は白米を販賣した事實を判示すれば十分であつて、必らずしも所論のように超過額の幾何であるかまで明示する必要のないことは、既に當裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一七〇號、昭和二四年七月九日第二小法廷判決參照)とするところである。 二 辯護人は、玄米及び白米の統制額の判示のないことを理由不備の一つに舉げでいるのであるが、この點も判決舉示の物價廳告示と相俟つて、その統制額が判定され得る以上、必らずしもその統制額をいちいち摘示事實中に明記しなければならないものではない。
一 統制額超過販賣に關する物價統制令違反罪の事實摘示と超過額明示の要否 二 判決舉示の物價廳告示によつて統制額が判定される場合と摘示事實中にその統制額を明記することの要否
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法36條1項,物價統制令3條,物價統制令4條,物價統制令33條
判旨
物価統制令違反の罪において、統制額の超過販売の事実は、超過額や具体的な統制額を明示せずとも、告示等から判定可能であれば足りる。また、許可等の犯罪成立阻却事由については、具体的判示や証拠説明を欠いても理由不備の違法とはならない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反(超過販売)の事実認定において、①具体的な統制額や超過額の判示は不可欠か。②犯罪成立を阻却する除外事由(許可等)の不存在について、具体的な判示および証拠説明を要するか。
規範
統制額の超過販売に関する罪は、統制額を超えて売買した事実があれば成立する。したがって、判決において超過額や具体的な統制額をいちいち明示する必要はなく、関連する告示等に照らして客観的に判定可能であれば足りる。また、行政上の許可等の犯罪成立を阻却する例外的事由については、被告人がこれに該当しないことを具体的に判示し、あるいは証拠説明を付さなくとも、理由不備の違法を招来するものではない。
事件番号: 昭和27(あ)4996 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の事案において、第一審が認定した事実に対し同令を適用したことは適法であり、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき事由も認められない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cが物価統制令違反の罪に問われた事案である。第一審および控訴審において有罪判決が下されたが、被告人側は量刑不当また…
重要事実
被告人は農業に従事する者であり、玄米600kgおよび白米288.44kgを、物価庁告示等により定められた統制額を超過する合計3万円で販売した。原判決は、具体的な統制額の数値や超過した金額の明示、および物価庁長官の許可等の「除外事由(犯罪成立阻却事由)」が存在しないことの詳細な立証や証拠説明を行わずに有罪判決を下した。これに対し被告人側が、理由不備や審理不尽を理由に上告した事案である。
あてはめ
①について、本件では玄米および白米の販売価格につき物価庁告示が存在し、被告人が農業者であることから適用されるべき統制額は客観的に特定可能である。したがって、判示中で逐一数値を挙げなくとも、告示と相俟って判定し得る以上、理由不備はない。②について、許可等の除外事由は犯罪の成立を妨げる事由(阻却事由)に該当する。かかる事由の不存在は、特段の事情がない限り、具体的摘示や証拠説明を欠いたとしても、直ちに判決の結論に影響を及ぼすような違法を構成するものではない。
結論
原判決に理由不備の違法はなく、上告は棄却される。統制額を超えた事実の摘示があれば足り、阻却事由の不存在に関する詳細な判示は不要である。
実務上の射程
犯罪構成要件の認定における判示の程度と、犯罪成立阻却事由(違法性阻却・責任阻却的要素)の立証・判示の要否に関する指針を示す。実務上、行政上の許可等が問題となる事犯において、検察官の立証範囲や裁判所の判示事項の程度を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(あ)5272 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として判例違反を主張する場合には、違反とされる判例を具体的に明示する必要があり、これを欠く主張は不適法である。また、刑の軽重の比較に誤りがあったとしても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、原判決を破棄する理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、判例違反および量刑不当…
事件番号: 昭和29(あ)891 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
所論公訴事実の記載は被告人が法定の除外事由がないのに昭和二七年一〇月下旬頃前後四回に亘りAから各粳精米五升を五五〇円宛で買受けたという趣旨たること明白であつて、刑訴二五六条三項にいわゆる「できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定して」訴因を明示しているものということができる。
事件番号: 昭和26(あ)927 / 裁判年月日: 昭和27年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法施行法3条3項が適用されるべき事案において、判決文中に同条項の適用を明示しなかったとしても、当然に判決破棄の事由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について上告した際、弁護人は単なる法令違反を主張したが、原審判決において刑法施行法3条3項の適用が明示されていなかった点について、判…