麻藥取締法にいわゆる「麻藥施行者」とは、同法第二條第九項の規定に從い醫師、歯科醫師又は獣醫師に限られるのであるが、同法中の「施用」という言葉は、他人に對するばかりでなく、自己の身体に對する場合をも含むものと解すべきである。
麻藥取締法にいわゆる「麻藥施行者」及び「施用」の意義
昭和23年7月法律123號麻藥取締法2條
判旨
麻薬取締法(現:麻薬及び向精神薬取締法)における麻薬の「施用」には、他人に対する行為のみならず、自己の身体に対する場合も含まれる。同法が「何人も」施用を禁止する規定は、医師等の麻薬施用者以外の者が自己の身体に麻薬を施用する行為をも禁止する趣旨である。
問題の所在(論点)
麻薬取締法上の「施用」の概念に自己への使用が含まれるか。また、同法4条3号が定める施用禁止規定の対象に、非専門家(麻薬施用者以外の者)による自己への注射行為が含まれるか。
規範
麻薬取締法における「施用」とは、他人に対する医療的処置等に限定されず、自己の身体に対して麻薬を使用する行為も含む。また、同法が「何人も(特定の麻薬の)施用をしてはならない」と規定する場合、それは麻薬施用者(医師・歯科医師・獣医師等)以外の一般人が自己の身体に麻薬を注射・摂取等する行為をも禁止する規範であると解される。
重要事実
被告人は、当時禁止されていた麻薬である塩酸ヂアセチルモルヒネ(ヘロインの塩類)を自己の身体に注射した。これに対し、原審は麻薬取締法4条3号(当時)の施用禁止規定を適用して有罪としたが、弁護人は「施用」とは他人に対する行為を指し、自己への使用は含まれない、あるいは医師以外の自己使用には適用されない旨を主張して上告した。
あてはめ
麻薬取締法上の「施用」という文言は、その性質上、他人の身体に対するものに限定すべき合理的な理由はなく、自己の身体に対する場合をも含む。本件において、被告人が自己の身体に塩酸ヂアセチルモルヒネを注射した行為は、まさにこの「施用」に該当する。そして、同法4条3号は「何人も」特定の麻薬の施用を禁止していることから、医師等以外の者であっても、自己に対する施用行為は同条の禁止対象となる。したがって、被告人の行為に同条を適用した原判断は正当である。
結論
被告人が自己の身体に禁止麻薬を注射した行為について、麻薬取締法4条3号を適用して処罰することは適法である。
実務上の射程
本判決は、薬物犯罪における「施用」の概念が自己使用を含むことを明確にした。司法試験等の答案上では、麻薬及び向精神薬取締法における「施用」の解釈、特に「譲渡し」「譲受け」等と並ぶ実行行為の定型として、自己使用が当然に「施用」に含まれることを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)245 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬取扱者でない者が、麻薬の譲受けおよび譲渡を行った行為は、麻薬取締法(当時)の定める禁止規定に違反し、同法に基づく処罰の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、麻薬取扱者の免許等を有していないにもかかわらず、塩酸モルヒネ粉末を譲り受け、さらに塩酸ヂアセチルモルヒネ(ヘロイン)注射液1CC入アン…