一 刑訴応急措置法施行前に為された犯罪行為であつても、同法施行後行われた訴訟手続においては、同法第一二条第二項により、従来旧刑訴第三四三条によつて当該事件について証拠能力を制限されていた供述録取書(副検事の聴取書)を証拠として審判しても、憲法第三一条、第三九条に違反しない。 二 本件の如き耕作地の交換の斡旋はたとえ農地の所有者が同一人であつたとしても、右農地調整法第一五条第二項第二号同法施行令第一四条第一号により市町村農地委員会の職務権限に属するものと認むべきである、論旨は自作農創設臨時措置法第二三条乃至第二五条に規定する農地等の交換に関する農地委員会の職務権限には本件の如き交換は含まれないと主張する。なるほど右規定による農地委員会の権限には本件の如き斡旋を含まないことは所論のとおりであるが、右規定による農地委員会の職務権限は農地調整法第一五条第二項第二号にいわゆる「ソノ他ノ法律ニ依リ其ノ権限ニ属セシメタル事項」にあたるのであつて、本件の如き耕作地の交換の斡旋が同法第一五条第二項二号同法施行令第一四条により市町村農地委員会の権限に属すると解することを妨げるものではない。
一 犯行後、刑訴応急措置法第一二条第二項によつてあらたに証拠能力を認められた証拠によつて審判することの合憲性 二 耕作地の交換の斡旋は市町村農地委員会の権限に属するか
刑訴応急措置法12条(附則3項),旧刑訴法343条,憲法31条,憲法39条,農地調整法15条(昭和21年10月21日法律42号により改正されたもの),農地調整法施行令14条(昭和21年11月21日勅令556号により改正されたもの),自作農創設臨時措置法23条
判旨
刑事訴訟法は訴訟手続に関する法規であって、犯罪行為時の実体法ではなく手続時点の法規が適用される。また、市町村農地委員が農地の利用関係や交換分合の斡旋を行うことは、農地調整法及び同施行令に基づきその職務権限に属する。
問題の所在(論点)
1. 犯罪行為後の訴訟法改正を適用して証拠能力を判断することは、憲法31条、39条に反するか。2. 同一所有者間の耕作地交換の斡旋は、市町村農地委員の「職務」に含まれ、収賄罪の対象となるか。
規範
1. 訴訟法規の適用:訴訟法は訴訟手続に関する法規であり、実体法ではない。したがって、上告理由等の訴訟手続については、犯罪行為時ではなく、その手続を行う時点の法規を適用すべきである。2. 賄賂罪における職務権限:公務員(農地委員等)の職務権限は、根拠法令の規定に基づき判断される。農地調整法15条2項2号及び同施行令14条の「農地の利用関係に関する斡旋」や「農地の交換分合の斡旋」に該当する行為は、法的な職務権限に属する。
重要事実
被告人は市町村農地委員の職にあり、農地問題(耕作地の交換問題)の斡旋を行った。これに関連して、被告人は報酬としての情を知りながら金員を受領したため、収賄罪に問われた。また、訴訟手続において、犯罪行為後に改正された刑訴応急措置法が適用され、旧法下では証拠能力が否定されていた聴取書が証拠として採用された。被告人側は、旧法下の「既得権」を主張し、新法の遡及適用は憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
1. 訴訟手続は手続時の法によるのが当然であり、被告人に旧法上の証拠排除に関する既得権は認められない。また、本件改正(刑訴応急措置法12条)は憲法37条2項の証人審問権を徹底させる趣旨であり、憲法に適合する。2. 農地調整法15条2項2号及び同施行令14条1号・2号によれば、農地関係の調整や利用関係の斡旋、交換分合の斡旋は農地委員会の職務権限である。たとえ所有者が同一人であっても、耕作地の交換の斡旋はこれに含まれる。被告人は農地委員の資格においてこれに関与しており、職務に関連する賄賂の収受と認められる。
結論
1. 訴訟法規の遡及適用(手続時法の原則)は憲法に違反しない。2. 本件耕作地の交換斡旋は農地委員の職務権限に属するため、これに関する金員受領は収賄罪を構成する。
実務上の射程
手続法については行為時法ではなく手続時法が適用されるという原則(訴訟手続の不遡及の否定)を確認した事例として重要である。また、賄賂罪における職務権限の範囲について、個別法(農地法関連)の委任規定に基づき、実質的な調整行為も含まれることを示している。
事件番号: 昭和26(あ)846 / 裁判年月日: 昭和27年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】収賄罪の成立要件である「職務」とは、公務員の一般的職務権限に属する事務を指し、地方自治法上の競争入札の要否が議会の同意に係るとされる場合、その手続に関与することは公務員の職務に該当する。また、犯情の差異に基づき共同被告人間で量刑に差を設けることは憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人A…