一 判決に証拠として「被告人に対する検事の第二回聴取書中判示同旨の供述記載」と掲げてあつても、記録中数通ある被告人に対する検事の聴取書中判示事項と同旨の記載ある聴取書は第一回聴取書だけであつて、その余の聴取書には別個の事実についての供述記載しかない場合には、右第二回聴取書は第一回聴取書の誤記であること明らかであるといわなければならない。 二 判示玄米七斗については、当時適用のあつた昭和二二年一一月一日物価庁告示第九六〇号に定めている統制額に基ずいて算出すべきものであつて、同告示により算出すれば、原判示金額より若干多額になること算数上明らかであり、原判決はこの点において違法が存するものといわなければならないが、原判示価格は被告人Aに有利に算出されている結果、同被告人に対する追徴の金額もそれだけ少額になつているので、右玄米七斗の価格の誤謬を指摘する論旨は結局被告人に不利益な主張となる。 三 農地所有権の移転についての地方長官の許可申請書に意見を附し、之を地方長官に進達することは右農地委員会の職務権限に属するものと認むべきである。 四 いわゆる荒廃地であつても、自作農創設特別措置法第三条の農地にあたる以上、政府買収の対象となる。
一 判決に掲げてある証拠の誤記であることの明瞭な場合 二 賄賂の価格算定の誤謬を主張する上告理由と被告人に不利益な主張 三 農地委員会の職務権限 四 いわゆる荒廃地と自作農創設特別措置法第三条の農地
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法409条,刑法197条,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条1項,農地調整法(昭和21年法律第42号により改正されたもの)4条3項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条1項,農地調整法施行令(昭和21年勅令第556号により改正されたもの)2条3項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条1項本文,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条2項,農地調整法施行規則(昭和21年農林省令第68号により改正されたもの)6条3項,自作農創設特別措置法(昭和24年法律第205号による改正前のもの)3条5項5号
判旨
賄賂罪における「職務に関し」とは、公務員の職務権限に属する事務そのものに限らず、これと密接に関連する事務も含まれる。農地委員が農地所有権移転の許可申請書に意見を付して地方長官に進達する行為は、同委員の職務権限に属し、これに関する謝礼等の収受は収賄罪を構成する。
問題の所在(論点)
農地委員が農地所有権移転許可の申請書に意見を付して進達する行為が、刑法197条1項にいう「職務」に含まれるか。
規範
刑法197条1項の「職務に関し」とは、公務員が法令上担当する職務権限に属する事務だけでなく、その職務と密接な関係を有する事務も含まれる。具体的には、法令上の権限に基づく補助的、付随的、あるいは慣行として行われる事務であっても、職務の公正およびそれに対する社会の信頼を害するおそれがある場合には職務関連性が認められる。
重要事実
被告人AおよびCは、市町村農地委員会の農地委員の職に就いていた。当時、農地の所有権移転には地方長官の許可が必要であり、その申請は市町村農地委員会を経由し、同委員会が意見を付して地方長官に進達する規定となっていた(農地調整法施行規則6条等)。被告人らは、農地売買の許可申請に関し、便宜の取り扱い(迅速な進達や有利な意見の付与等)を期待する者から、その報酬ないし謝礼の趣旨で現金等を収受した。弁護人は、これらが直接的な職務行為ではないと主張して上告した。
あてはめ
農地調整法および同施行規則の規定によれば、農地所有権移転の許可申請は市町村農地委員会を経由すべきものとされ、同委員会は遅滞なく意見を付して地方長官に進達することが義務付けられている。したがって、この意見付与・進達業務は農地委員会の正当な職務権限に属する事項である。被告人らは農地委員という公務員の資格において、当該権限の行使につき便宜の取り扱いを受ける等の趣旨であることを知りながら金員を収受しており、これはその職務に関し賄賂を収受したものといえる。
結論
被告人らの行為は、農地委員の職務に関する収賄罪(刑法197条1項)を構成し、有罪とした原判決に法令適用の誤りはない。
実務上の射程
本判決は、賄賂罪における「職務」の範囲が、単に最終的な決定権限に限られず、その前提となる進達や意見具申といった補助的権限も含むことを明確にしている。答案上は、職務権限の有無を判断する際、根拠法令の規定を具体的に摘示した上で、本判例の論理を援用して「密接に関連する事務」として職務性を肯定する流れで活用すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)4361 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: 棄却
被告人は特別都市計画法に基く広島市東部地区土地区劃整理委員会の委員として、換地に関する事項その他同法所定の土地区劃整理について工事施行者である広島市長の諮問に対し審議答申する職務を担当しているものであるが、判示の各日時に判示各場所において、A外一名から同人等の各土地の換地等について斡旋等をしたことに対する謝礼の趣旨とし…