刑訴応急措置法第八条第四号に基く検察官の請求により被告人に対し勾留訊問をなし勾留状を発した判事が、第二審の審判に関与したとしても、その勾留訊問調書が第一審判決の証拠とされていない以上は、右判事は旧刑訴第二四条第八号にいわゆる「前審ノ裁判又ハソノ基礎トナリタル取調ニ関与シタ」ものにあたらない。
起訴前の強制処分関与と旧刑訴第二四条第八号
刑訴法24条8号,刑訴法410条2号
判旨
裁判官が起訴前に逮捕状や勾留状を発するなどの強制処分に関与したとしても、それは上訴により不服を申し立てられた裁判やその基礎となった証拠の取調べに関与したものとはいえず、除斥原因には該当しない。
問題の所在(論点)
裁判官が起訴前の強制処分(逮捕状・勾留状の発付等)に関与した場合、それは刑訴法上の除斥原因である「裁判官が事件につき前審の裁判に関与したとき」に該当するか。
規範
除斥原因(旧刑訴法24条8号、現行20条7号)にいう「前審裁判又ハ其ノ基礎ト為リタル取調ニ関与シタルトキ」とは、上訴により不服を申し立てられた裁判、またはその裁判の基礎とされた証拠の取調べ等に関与したことを意味する。
重要事実
被告人の刑事事件において、一審判決に関与した判事小沢三郎は、本件の起訴前に簡易裁判所判事代行として逮捕状を発付し、さらに地方裁判所判事として検察官の請求に基づき勾留訊問を行って勾留状を発付していた。なお、当該勾留訊問調書は本件の証拠としては採用されていなかった。
あてはめ
本件判事は起訴前に逮捕状および勾留状を発付しているが、これらは起訴前の強制処分に関与したものに過ぎない。本件において、これらの処分が「上訴により不服を申し立てられた裁判」そのものであるとはいえず、また勾留訊問調書が証拠とされていない以上、当該処分が「裁判の基礎とされた証拠の取調べ」に関与したものとも認められない。したがって、本件判事の関与は除斥原因の定義に当てはまらない。
結論
起訴前の強制処分(逮捕・勾留)に関与した裁判官が、その後に公判審理に関与しても除斥原因には該当せず、裁判手続に違法はない。
実務上の射程
現行刑訴法20条7号の「前審の裁判に関与した」ことによる除斥の範囲を限定的に解釈する際のリーディングケースである。逮捕状・勾留状の発付、捜索差押令状の発付などの令状裁判官としての職務遂行は、原則として除斥原因にならないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1325 / 裁判年月日: 昭和28年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官がその被告事件の第一審判決に関与しても、憲法37条1項に違反せず、刑事訴訟法20条各号の除斥事由にも該当しない。 第1 事案の概要:本件被告人に対し、簡易裁判所裁判官として逮捕状を発付した裁判官が、その後、地方裁判所判事として同一被告事件の第一審の審理および判決に関与した。弁…