一 本件公訴提起は公判請求書に基いて公判請求がなされているのであるが、右公判請求書の記載は論旨摘録の通りであつて、その記載においては被告人等が欺罔手段を用いたのは被害者を誘い出す為めであり、財物の交付を受ける手段としてこれを用いたことは少しも記載されていない。換言すれば財物を騙取せんとした行為は少しも書いてないのである。それ故詐欺については審判の請求が無かつたものというの外なく、従つて原審は審判の請求を受けない事件について判決した違法あるものといわざるを得ない。本件の場合の様に起訴状において強取の事実が起訴され裁判所で調べた結果正に起訴状記載の強取の事実が認められた場合、裁判所はその事実に強盗の規定を適用して所罰した上、その事実の外に更に起訴状に書いてない詐欺の事実について審理し、その事実を認定してこれに詐欺の規定を適用し二罪として併合罪の加重をするのは不告不理の原則に反するものといわなければならない。本件公判請求書を見ると罪名としては強盗傷人とあり、公訴事実としては「被告人等は共謀の上水飴の取引に藉口してA等を誘出し金品を強奪せんことを企て、被告人Bが昭和二二年一〇月八日頃…A方に至り同人に対し千葉縣庁の職員に配給した水飴二百三十本を横流しすべきにより、買受けられたき旨申欺き同人がその共同買受人にして右水飴代金の内金四十六万円を携帯したる旨Cを被告人D、Eが附近に待機せる千代田区a…農林省庁舎に同道して中(略)被告人Bな所携の鉄棒を以て右Fの頭部を乱打し…云々)と記載し強盗傷害の事実を記載して居る。 二 審判の請求を受けない詐欺事件について判決した違法があるという理由で原判決を破棄する場合は、右詐欺の共犯と認められた共同上告人に対しても破棄の理由は共通であるものとして旧刑訴法第四五一条を適用すべきである。
一 審判の請求を受けない事件につき判決した事 二 審判の請求を受けない事件につき判した違法と破棄理由の共通
旧刑訴法410条18号,旧刑訴法291条,旧刑訴法451条
判旨
起訴状に記載のない事実を併合罪として認定し処罰することは、不告不理の原則に反し許されない。ただし、起訴事実と一連の行為であり牽連犯となるような場合には、起訴のない事実を認定して処罰することも妨げられない。
問題の所在(論点)
起訴状に記載のない事実を、起訴事実とは別の独立した犯罪として認定し、併合罪として処罰することが不告不理の原則(刑事訴訟法247条、378条3号参照)に抵触するか。
規範
裁判所は、起訴状に記載された事実の範囲内でのみ審判を行うべきであり(不告不理の原則)、起訴事実とは別個の独立した罪となる事実を認定して併合罪として処罰することは許されない。もっとも、起訴された犯罪の手段として行われた行為(住居侵入等)のように、起訴事実と一連の行為であって科刑上一罪(牽連犯)の関係にある場合には、例外的に起訴状に記載のない事実を認定して処罰することも許容される。
重要事実
被告人らは強取の事実で公訴提起された。起訴状の記載では、欺罔手段を用いたのは被害者を誘い出すためだけであり、財物の交付を受ける手段として用いた(詐欺の)事実は記載されていなかった。しかし、原審は起訴状記載の強取の事実(強盗罪)を認めただけでなく、起訴状に記載のない詐欺の事実をも認定し、これらを併合罪として加重処罰した。
あてはめ
本件公訴請求書の記載によれば、被告人らが用いた欺罔は誘い出しの手段に過ぎず、財物騙取の手段としての詐欺事実は一切記載されていない。したがって、詐欺については審判の請求がないものというべきである。原審が、起訴事実である強盗を認定した上で、さらに起訴状にない詐欺事実を併合罪として処罰したことは、牽連犯のように一罪として処理される場合とは異なり、不告不理の原則に違反する重大な違法がある。
結論
起訴状に記載のない独立した犯罪事実を併合罪として認定・処罰することは許されず、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
裁判所の審判範囲(公訴事実の同一性)と不告不理の関係を論じる際、併合罪となる事実の認定が許されないことを示す基本判例。実務上、科刑上一罪(牽連犯・観念的競合)であれば起訴事実の範囲外の認定が一定程度許容される余地を示唆している点も重要である。
事件番号: 昭和25(れ)503 / 裁判年月日: 昭和25年7月11日 / 結論: 棄却
一 公判調書や判決書の冒頭に被告事件名を記載したり、裁判長が公判審理を開始するに當つて被告事件名を告知することは、審判される事件を簡明に表示するために行われている實例であるが、別段に訴訟法上の要請に基くものではなく、またこれによつて審判の對象は判決書においてはその理由中に明記され公判廷においては起訴状に記載された公訴事…
事件番号: 昭和25(あ)2121 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
所論の点はいずれも、原審において控訴趣意として主張されなかつた事項であり、また刑訴第三九二条二項は同条項所定の事由に関し控訴審に職権調査の義務を課したものではないから、原判決はこれらの点についてなんら判断を示していないのである。従つてこのような事項につき、単純に原判決の法令違反を主張することはもちろん、これを判例違反と…