被告人の自白と盗難届書だけで賍物運搬の他事実を認定しても刑訴法第三一九条第二項の規定に違反しない。
自白と補強証拠
旧刑訴法319項条2項,刑法256条2項
判旨
公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」に含まれないため、これのみに基づき有罪を宣告することが可能である。また、被害者による盗難届書は、被告人の自白を補強する証拠となり得る。
問題の所在(論点)
1. 公判廷における被告人の自白が、憲法38条3項にいう「本人の自白」に該当し、補強証拠を必要とするか。 2. 犯罪事実の認定において、被害者の盗難届書を自白の補強証拠とすることができるか。
規範
1. 憲法38条3項の「本人の自白」には、当該事件の公判廷における被告人の自白は含まれない。したがって、公判廷での自白があれば、補強証拠がなくとも有罪を認定できる。 2. 被告人の自白を補強する証拠(刑訴法319条2項)として、客観的状況を示す被害者の「盗難届書」を用いることができる。
重要事実
被告人は、第1審の公判廷において犯罪事実を自白した。第1審判決は、この公判廷の自白に加え、盗難届書、司法警察員および検察官に対する各供述調書(自白)を総合して有罪を認定した。これに対し弁護人が、被告人の自白のみを証拠として有罪を認定したことは憲法38条3項に違反するとして上告した事案である。
あてはめ
1. 憲法38条3項の趣旨は、密室での強要された自白のみによる誤判を防止する点にある。公判廷での自白は裁判官の面前で自由になされるものであるから、同条の「自白」には該当しないと解するのが当裁判所の判例である。したがって、本件第1審および第2審が公判廷の自白を証拠とした点に憲法違反はない。 2. また、本件では単なる自白のみではなく、被害者から提出された「盗難届書」が存在する。これは被告人の自白から独立した客観的事実を示す証拠であり、自白の真実性を担保する補強証拠として許容される。
結論
公判廷の自白は憲法38条3項の自白に含まれず、また盗難届書による補強もなされているため、憲法違反および刑訴法319条2項違反のいずれも認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
公判廷自白に補強証拠が不要とする判例法理を確認するものだが、現在の刑訴法319条2項の解釈においては、実務上、公判廷の自白であっても補強証拠が必要であるとするのが通説的見解である点に注意を要する。一方で、盗難届書の補強証拠能力については、客観的な罪体の存在を示す証拠として今日でも参照し得る。
事件番号: 昭和26(あ)3979 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が唯一の証拠である場合に該当しない限り、憲法38条3項及び刑訴法319条1項に基づく補強証拠の必要性は認められず、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人が自白をしている事案において、弁護人は当該自白が被告人に不利益な唯一の証拠であると主張し、憲法違反または訴訟法違反…