一旦死体を埋没遺棄し、数月後更にこれを発掘して損壊する如き場合は、死体損壊罪と同遺棄罪との併合罪が成立する。
死体遺棄後の死体損壊と罪数
刑法190条
判旨
人を殺害して一旦死体を埋没遺棄した後、数か月後にこれを発掘して損壊した場合、死体遺棄罪に加えて死体損壊罪が別途成立し、両罪は併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
死体を遺棄した数か月後に当該死体を発掘して損壊した場合に、死体遺棄罪(刑法190条)に加えて死体損壊罪(同条)が別途成立するか。先行する遺棄行為との罪数関係が問題となる。
規範
人を殺害した後に死体を損壊・遺棄する行為において、殺人と不可分な一連の行為として行われる場合とは異なり、一旦遺棄行為が完了した後、時間的・場所的に近接しない状況下で新たな犯意に基づき死体を損壊した場合には、既に成立している死体遺棄罪とは別に死体損壊罪が成立する。
重要事実
被告人は、人を殺害した後にその死体を地中に埋没して遺棄した。その後、数か月が経過してから、被告人は一旦埋没した死体を発掘し、これを損壊した。
あてはめ
事件番号: 平成22(あ)2003 / 裁判年月日: 平成24年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】殺人の前科があり、反省の機会を与えられていたにもかかわらず、再び同様の残虐な手法で殺害及び死体損壊・遺棄に及んだ場合、自白等の有利な事情を考慮しても死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、以前に交際女性を窒息死させ死体損壊・遺棄に及んだ際、殺人罪を免れ死体損壊罪等のみで刑に服していた。…
本件では、被告人は死体を埋没することで一旦遺棄行為を完了させている。その後「数か月後」という相当な期間が経過した後に、改めて死体を発掘して損壊に及んでおり、これは当初の殺害や遺棄に伴う一連の付随的行為とは評価できない。したがって、先行する死体遺棄罪とは別に、新たな法益侵害として死体損壊罪の構成要件を充足するといえる。
結論
死体遺棄罪と死体損壊罪の二罪を構成し、これらは併合罪となる。上告棄却。
実務上の射程
死体遺棄・損壊罪における罪数判断の基準を示す。殺害直後の損壊・遺棄が一個の死体遺棄・損壊罪(包括一罪)となる場合と異なり、遺棄完了後の時間的断絶がある場合には別罪構成となることを明示した。答案上は、数か月という期間の経過を捉えて「別個の犯意」や「行為の非一連性」を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)1986 / 裁判年月日: 昭和24年11月26日 / 結論: 棄却
一 論旨は被告人の所爲は殺意を以て行われたと認むべき證明がないから傷害致死罪を以て處斷すべきものであるというのである。しかし原刑決は被告人の殺意の點を「凶器の種類、攻撃の個所、回數並びに傷害の部位程度に徴し」て認定しているのである。然らば原判決がこの證據と原判示他の證據とを綜合して判示事實が刑法一九九條殺人罪に該當する…
事件番号: 平成23(あ)1224 / 裁判年月日: 平成26年3月17日 / 結論: 棄却
1 同一被害者に対し約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実については,その暴行が,被告人と被害者との一定の人間関係を背景として,共通の動機から繰り返し犯意を生じて行われたものであることなどの事情(判文参照)に鑑みると,全体を一体のものと評価し,包括して一罪と…