昭和二〇年厚生省令第四四号は、麻薬中その製剤が最も容易で且つ人体に及ぼす害毒が極めて激烈である塩酸ヂアセチルモルヒネ及びその一切の製剤だけを限つて、その所有、使用、破棄、販売、購入、贈与、受贈分配又は輸送を禁止し且つこれが届出、沒収等を定めた特別の規定であり、また、同二一年同省令二五号は、同令二条所定の麻薬一般について定めた一般規定であるから、前者は後者の特別法たる性格を有するものと解するを相当とする。従つて、後者の麻薬中には塩酸ヂアセチルモルヒネを包含し且つ後者の麻薬の小分、販売、授与又は使用に関する取締規定は前者の規定する塩酸ヂアセチルモルヒネの使用、販売等の禁止後に制定されたものではあるが、前者は後者により改廃されたものではなく、両者とも一般法、特別法として併存するものとみるべきである。
昭和二〇年厚生省令第四四号と昭和二一年同省令第二五号との関係
塩酸ヂアセチルモルヒネ及び其の他の製剤の所有等の禁止及び沒収に関する省令(昭和20年11月22日厚生省令44号)1条,塩酸ヂアセチルモルヒネ及び其の他の製剤の所有等の禁止及び沒収に関する省令(昭和20年11月22日厚生省令44号)4条,麻薬取締規則(昭和21年6月19日厚生省令25号)1条,麻薬取締規則(昭和21年6月19日厚生省令25号)2条,麻薬取締法6条74条
判旨
害毒が極めて激烈な塩酸ヂアセチルモルヒネに限定して厳格な規制を課す省令は、その後に制定された麻薬一般を規制する省令の特別法としての性格を有し、両者は一般法と特別法の関係として併存する。したがって、法改正による旧規定の廃止後においても、廃止前の行為に対しては依然として特別法たる旧省令の罰則が適用される。
問題の所在(論点)
特定の薬物(塩酸ヂアセチルモルヒネ)を対象とする厳格な旧規定(省令44号)と、その後に制定された薬物一般を対象とする規定(省令25号)の優劣関係、および法改正後の旧規定の適用可否が問題となった。
規範
法規の改廃において、特定の対象(本件では塩酸ヂアセチルモルヒネ)に限定して厳格な禁止・届出・没収等を定めた規定は、その後に制定された同種の対象一般(麻薬一般)に関する取締規定に対し、特別法たる性格を有する。後法の制定によって前法が当然に改廃されるわけではなく、両者は一般法・特別法の関係として併存する。法改正により双方が廃止された場合でも、経過措置(麻薬取締法74条等)に基づき、廃止前の行為については特別法の罰則が適用される。
事件番号: 昭和26(れ)2495 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
たとえ医薬品の販売行為は一回であつても、それが業としてなされたものと認められる場合は、旧薬事法二三条一項に違反するものというべきである。
重要事実
被告人Aは、麻薬の一種である塩酸ヂアセチルモルヒネ(ヘロイン)を販売した。当時、昭和20年厚生省令44号(以下「省令44号」)は、人体への害毒が激烈な塩酸ヂアセチルモルヒネに限定して販売等を厳格に禁止していた。その後、麻薬一般の取締を定めた昭和21年厚生省令25号(以下「省令25号」)が制定されたが、省令44号は明示的に廃止されていなかった。その後、麻薬取締法(旧法)の制定に伴い両省令は廃止されたが、同法74条は廃止前の行為への罰則適用を認めていた。弁護人は、後法である省令25号の制定により省令44号は失効しており、省令44号を適用して被告人を処断することは法令適用の誤りであると主張して上告した。
あてはめ
省令44号は、麻薬の中でも製剤が容易で害毒が極めて激烈な塩酸ヂアセチルモルヒネのみを対象として禁止・届出・没収等を定めた特別の規定である。これに対し、後から制定された省令25号は麻薬一般の取締を定めた一般規定である。性質上、前者は後者の特別法に当たると解するのが相当であり、後者の制定によって前者が改廃されたとは認められず、両者は一般法・特別法として併存していたといえる。したがって、麻薬取締法による廃止前の行為については、特別法である省令44号の罰則が適用されるべきであり、第一審が同省令を適用した判断に誤りはない。
結論
塩酸ヂアセチルモルヒネの販売行為に対し、一般法である省令25号ではなく特別法である省令44号を適用して処罰することは正当である。
実務上の射程
新旧の法規や一般規定・特別規定が重畳的に存在する場合の解釈指針を示す。特に、対象物の危険性に着目した峻別が行われている場合、後発の一般規定が先行する特定の特別規定を当然に排斥するものではないという「特別法は一般法に優先する」原則を確認する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2495 / 裁判年月日: 昭和27年6月25日 / 結論: 棄却
憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」には、判決裁判所の公判延における被告人の自白を含まない。
事件番号: 昭和26(れ)1079 / 裁判年月日: 昭和26年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が実質的に事実誤認の主張に帰し、刑事訴訟法405条の適法な上告理由に該当しない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てたが、その趣旨は原審の認定した事実関係を争うものであった(詳細な具体的犯罪事実は判決文からは不明)。 第2 問題の所在(論点):被告人が…
事件番号: 昭和25(あ)1351 / 裁判年月日: 昭和26年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条の職権破棄事由も認められない場合に、上告を棄却すべきであることを示したものである。 第1 事案の概要:本件において弁護人が提出した上告趣意の内容、および具体的な公訴事実の詳細は判決文からは不明であるが、弁護人は刑訴法405条に基づき…