甲検察庁が乙検察庁に対して為した前科調回答の電信訳文は、刑訴法第三二三条三号に該当する書面と認むべきである。
前科調回答電信訳文の証拠法上の地位
刑訴法313条3号
判旨
検察庁間の前科照会に対して行われた回答の電信訳文は、刑事訴訟法323条3号所定の「前二号に掲げるものの外、特に信用すべき情況の間に作成された書面」に該当し、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
検察庁間の前科照会回答の電信訳文について、刑事訴訟法323条3号の伝聞例外(特に信用すべき情況の下に作成された書面)として証拠能力が認められるか。
規範
刑事訴訟法323条3号にいう「特に信用すべき情況の間に作成された書面」とは、同条1号(戸籍謄本等)や2号(商業帳簿等)に準ずる高度の定型的・客観的信用性が認められる書面を指す。作成者の主観的な意図が入り込む余地が少なく、かつ作成過程が機械的または事務的であり、その正確性が制度的に担保されていることが必要である。
重要事実
和歌山地方検察庁が鹿児島地方検察庁に対し、被告人の前科について照会を行った。これに対し、鹿児島地方検察庁から電信によって回答がなされ、その内容を翻訳した「前科調回答の電信訳文」が作成された。原審はこの電信訳文を証拠として採用し、被告人の前科を認定した。これに対し、被告人側は同意のない書面であり証拠能力がないと主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)3790 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、被害者の盗難届等の自白以外の証拠が併存する場合には補強証拠が存在するものとして、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは窃盗等の罪に問われ、第一審において有罪判決を受けた。被告人らは自白をしていたが、弁護人は当該判決が…
あてはめ
本件の前科調回答の電信訳文は、検察庁という公的機関の間で、その職務権限に基づいて行われた照会および回答の手続きに基づくものである。その成立過程および書式に鑑みると、恣意が介入する余地は乏しく、事務的に処理される性質のものである。したがって、本面は戸籍謄本等に準ずる高度の定型的・客観的信用性が認められる書面であると評価できる。よって、刑事訴訟法323条3号に該当すると解される。
結論
本件書面は刑事訴訟法323条3号に該当するため、被告人の同意がなくとも証拠能力を有する。これに基づき前科を認定した原判決に違法はない。
実務上の射程
本判決は前科照会回答という実務上頻出する書面の証拠能力を肯定した重要判例である。答案上は、323条各号の該当性を検討する際、特に3号の「特に信用すべき情況」を具体化する際の例証として用いる。ただし、電信訳文という形式であっても、公的機関による事務的回答であれば同条の適用があり得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和24(れ)1152 / 裁判年月日: 昭和25年10月11日 / 結論: 棄却
公判廷外の証人訊問については弁護人立会のもとに行われていることとが記録上明白であるから被告人が立会しなくとも必ずしも所論憲法第三七条第二項に違背するものではない。(昭和二三年れ第一〇五四号同年九月二二日大法廷判決参照)論旨は理由がない。
事件番号: 昭和26(れ)854 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、適法な証拠調べを経た押収品等の物証が存在する場合には、憲法38条3項の「自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合」には当たらず、有罪判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:被告人が脇差や日本刀等の所持により起訴された事案において、原審の公判調書には「押収品は全部これを…
事件番号: 昭和25(れ)1745 / 裁判年月日: 昭和26年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階で拷問があったと主張される場合であっても、原判決が当該供述を証拠として採用していない以上、判決に証拠上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が警察署において拷問を受けた旨を主張し、証拠の違法性を争った事案である。しかし、原判決を確認すると、警察段階での被告人の供述は一切証拠として…
事件番号: 昭和24(れ)1759 / 裁判年月日: 昭和25年1月10日 / 結論: 棄却
論旨は、審理の冒頭における概括的な犯罪事実の承認によつて、犯罪事實の内容に亘り全部を認めたものとすることはできないと主張するなるほど、被告人が概括的の問答では犯罪事實を認めても、個々の點についてはこれに反する供述をしたような場合には、冒頭の答えだけで細部に亘る悉くの事實を認めたものとは云い難いこともあらう。しかしその何…