一 證據説明は、記録と照らし合せて見てどの證據でどの犯罪事實を認めたかが明かにされていれば足ると言うべきである。 二 第一審判決は證據の標目を一括舉示しているけれども、從つて判文上は證據と事實との關連性は明かでないが、記録と照らし合せて見ればどの證據によつてどの事實が認定されたか極めて明白である。しかも第一の事實と第二の事實と發展的に遂行されたものであつて、證據も共通のものが多いばかりでなく、一方の事實に關する證據は間接に他の事實についても情況證據になつているとも見られないことはない從つて本件においては第一と第二の事實につき一括して證據を舉示することがむしろ自然であると思われるのであつて、原判決が論旨援用の判例に反する判斷をしたものとしても、本件のような事案については原判決の證據の標目舉示は刑訴法第三一七條および第三三五條第一項の趣旨に反するものでないと思う。
一 證據説明の程度 二 數個の犯罪事實に關する證據説示の方法
刑訴法335條1項
判旨
有罪判決における証拠の標示は、各犯罪事実ごとに個別化されていなくとも、判決文を記録と照らし合わせてどの証拠がどの犯罪事実に対応するかを合理的に知り得る場合には、刑訴法335条1項の要請に反しない。
問題の所在(論点)
数個の独立した犯罪事実を認定する場合において、証拠の標目を有罪判決に記載する際、各事実ごとに対応する証拠を個別に区分して掲示する必要があるか(刑訴法335条1項の「証拠の標目」の記載程度)。
規範
刑事訴訟法335条1項が「証拠の標目」を掲げるべきとした趣旨は、証拠によって記録から証拠資料を検出し得る点にある。したがって、各犯罪事実と証拠の関係を一々区分して記載しなくとも、判決文を記録と照らし合わせて、どの証拠によってどの犯罪事実が認められたかが明らかにされていれば足りる。
重要事実
事件番号: 昭和25(れ)2875 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連続一罪として起訴された数個の行為の一部について無罪と認める場合、主文において個別に無罪の言い渡しをする必要はない。 第1 事案の概要:被告人は、複数の行為からなる連続一罪として起訴された。裁判所は審理の結果、起訴された数個の行為のうち、その一部については犯罪の証明がないと判断したが、残部について…
被告人に対し数個の独立した犯罪事実(虚偽公文書作成、同行使、詐欺等)が認定された際、第一審判決は、証拠の標目として10点の証拠を一括して掲示した。これに対し弁護人は、どの証拠がどの事実を認めたのかが判文上判別できず、理由不備(刑訴法335条1項違反)であるとして控訴・上告した。
あてはめ
本件第一審判決が掲げた10点の証拠について記録と照らし合わせると、各証拠が第一の事実、第二の事実、あるいは全事実に関する情状に関するものかが判別可能である。また、本件の各事実は発展的に遂行されたものであり、証拠も共通するものが多く、一括標示がむしろ自然である。このように、判文上は証拠と事実の関連性が直ちに明かでないとしても、記録との照合によりその対応関係が明白である以上、法が要求する証拠説明として不足はない。
結論
各事実ごとに証拠を区分して掲示しなくとも、記録との照合により事実と証拠の対応関係が明白である限り、刑訴法335条1項に違反しない。
実務上の射程
有罪判決の構成に関する実務上の指針。事実認定の根拠が複数の事実にまたがる場合や、事実関係が密接に関連する事案において、形式的な個別掲示を不要とする。答案上は、理由不備を主張する文脈で、実質的な告知・不服申立ての便宜が確保されているかという観点から、本判例を引用して違法の有無を論じることになる。
事件番号: 昭和31(あ)2061 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の証拠説明において、証拠の種類や供述者を特定でき、どの事実をどの証拠で認定したかが客観的に明らかであるならば、択一的な記載方法であっても刑訴法335条1項に違反しない。 第1 事案の概要:第一審判決の証拠説明において、被告人に関する証拠として「……の各供述調書抄本または謄本」と記載されていた…
事件番号: 昭和25(あ)2011 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
刑訴規則第一八七条第一項は、控訴審には準用されない。