一 食糧管理法が自家消費の爲のみにする主要食糧の移動であつても法定の除外事由がない限りこれを處罰すべきものと定めているからといつて同法をとらえて憲法第二五條の規定に違反するものといえないことは當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇五號同年九月二九日大法廷判決、判例集第二卷第一〇號第一二三五頁以下)の趣旨とするところである。又食糧管理法の規定は公共福祉の爲に人の自由を制限するものであることは同法第一條の規定に照して明らかなところである。そして憲法第一三條は生命自由幸福追求の權利は公共の福祉に反しない限度において國政の上で尊重されなければならない旨を規定しているのであるから食糧管理法が公共の福祉の爲に必要であるとして所論のような主要食糧の移動までも制限しその制限に反する所爲を處罰する趣旨の規定を設けているからといつて同法を目して憲法第一三條に違反するといえないこともまた當裁判所の判例の趣旨とするところである。 二 刑訴法施行法第五條の規定にいわゆる前條の事件とは犯罪の行われた時が新刑訴法施行の前であると後であるとを問わずいやしくも新刑訴施行の際にまだ公訴の提起されていないすべての事件を指す義と解すべきことは文詞からも條理からも明らかなところであつて、同條の規定が新刑訴法を施行することに關して定められたものであるからといつて、所論のように犯罪が新刑訴法の施行後に行われた場合の事件の審判にはその適用がないと解すべき理由はない。
一 自家消費のためのみの主要食糧の移動の制限は憲法第一三條及び第二五條違反か 二 刑訴施行法第五條にいわゆる「前條の事件」の趣旨と新刑訴法施行後における右施行法の適用の有無
憲法25條,憲法13條,食糧管理法9條,食糧管理法31條,刑訴施行法5條
判旨
食糧管理法が自家消費目的の主要食糧の移動を制限し処罰することは、公共の福祉による正当な制限として憲法13条及び25条に違反しない。
問題の所在(論点)
1.自家消費目的の食糧移動を制限・処罰する食糧管理法の規定は、憲法13条および25条に違反するか。 2.刑事訴訟法施行法に基づき、弁護人なしで開廷・審判した手続は適法か。
規範
憲法13条が保障する生命、自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限りにおいて尊重される。したがって、特定の法律が公共の福祉のために必要であるとして個人の自由を制限し、これに違反する行為を処罰する規定を設けていても、その制限が公共の福祉に基づく合理的なものである限り、憲法13条に違反しない。
重要事実
被告人は、食糧管理法の規定に反して主要食糧の移動を行った。被告人は、当該移動が自家消費を目的とするものであったことを理由に、このような制限および処罰は憲法25条(生存権)および憲法13条(幸福追求権等)に違反すると主張して上告した。また、第一審において弁護人が選任されないまま審判が行われたことの適法性も争点となった。
あてはめ
食糧管理法1条によれば、同法は食糧を管理することで国民生活の安定を図るという「公共の福祉」を目的としている。主要食糧の移動制限は、この目的達成のために必要な手段として設けられたものであり、自家消費目的であっても法定の除外事由がない限り制限の対象となる。このような制限は、憲法13条が認める公共の福祉による合理的な制限の範囲内といえる。また、憲法25条との関係でも、同様の趣旨から違憲とはいえない。刑事手続に関しては、被告人が弁護人の選任を辞退したため、施行法の規定に従い弁護人なしで審判した点に違法は認められない。
結論
食糧管理法による食糧移動の制限および処罰は、憲法13条、25条に違反せず、第一審の手続も適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
人権の公共の福祉による制約を認める際の古典的な判断枠組みとして、憲法13条の解釈において引用される。特に、生存権的配慮が必要な領域であっても、立法目的の公共性と手段の必要性が認められる場合には、広範な制約が許容されることを示している。
事件番号: 昭和23(れ)386 / 裁判年月日: 昭和23年10月2日 / 結論: 棄却
一 刑訴應急措置法第一二條第一項本文は同項所定の書類は被告人の請求があるときは、その供述者又は作成者を公判期日において訊問する機會を被告人に與えなければこれを證據とすることができない旨を規定しているのであるから、被告人からその請求がなかつた場合には同項所定の書類はその供述者又は作成者を公判期日において訊問する機會を被告…