一 憲法第三五條は、個人の住居、書類及び所持品について濫に侵入、捜査、押收を受けることのない權利を保證し、捜索又は押收をするには正當な理由に基いて發せられ、且つ捜索する場所及び押收する物を明示する裁判官の令状を必要とする趣旨を宣明した規定であつて、適法な令状によつて押收した物件の換價その他の處分について規定したものではない。 二 舊刑訴法一六五條を檢事又は司法警察官のする押收に準用し、檢事又は司法警察官も亦押收物の換價處分ができる旨規定した舊刑訴法一七四條は憲法第三五條に違反しない。 三 物價統制令第一三條ノ二違反の罪を問擬するにあたり、被告人がある物をその卸賣統制額、小賣統制額の何れをも超過する一定の價格で販賣する目的で所持していた事實を確定した以上、その販賣せんとした價格が卸賣價格か小賣價格かを確定する必要はない。
一 憲法第三五條の趣旨 二 舊刑訴法一六五條を檢事又は司法警察官のする押收に準用した舊刑訴法一七四條の合憲性(第三五條) 三 物價統制令第一三條ノ二違反罪と、販賣せんとする價格が卸賣價格か小賣價格かを確定することの要否
憲法35條,舊刑訴法165條,舊刑訴法174條,物價統制令3條,物價統制令13條ノ2
判旨
憲法35条は令状による差押の適法性を要求するが、適法に差し押さえた物件の換価処分まで裁判所の令状を要するものではなく、検察官や司法警察官による換価処分も合憲である。
問題の所在(論点)
適法に差し押さえられた物件について、裁判所の令状なく検察官や司法警察官が換価処分を行うことは、憲法35条(令状主義)に違反しないか。
規範
憲法35条が保障する権利は、正当な理由に基づき裁判官が発する令状によらなければ、侵入、捜索、押収を受けない権利である。同条は適法な令状によって押収された物件の換価その他の処分について規定したものではない。したがって、押収後の換価処分を検察官や司法警察官が行うことが直ちに同条に違反するものではなく、法的な根拠に基づく手続であれば適法である。
重要事実
経済調査官が、裁判官の発付した臨検捜索許可状および差押許可状に基づき、警察官を同行して物件を差し押さえた。その後、司法警察官である警察署長が、旧刑事訴訟法の規定(現行刑事訴訟法122条、197条2項参照)に基づき、当該押収物件の換価処分(買上げ)を行った。被告人は、換価処分が裁判所の令状なしに行われたこと等を不服として、憲法35条違反等を主張した。
あてはめ
本件では、当初の差押えは裁判官の発付した適法な許可状に基づき、法定の手続(経済調査庁法等)に従って行われており、憲法35条が求める令状主義の要請を満たしている。その後の換価処分は、既に適法に公的占有下にある物件の金銭化手続にすぎず、これに別途裁判官の令状を要すると解すべき理由はない。また、旧刑訴法の準用規定に基づき司法警察官が換価処分を行うことも、法の認める適法な権限行使である。したがって、本件差押えおよび換価処分に違法はない。
結論
検察官または司法警察官による押収物の換価処分は、憲法35条に違反しない。また、被告人の所有に属する物件が適法に換価され金銭となった場合、その割合が判明していれば換価金を没収することも適法である。
実務上の射程
捜査段階における押収物の処分(還付・換価等)が、憲法上の令状主義の射程外であることを明確に示した判例。答案上は、捜索・差押え自体の適法性と、その後の処分の適法性を峻別して論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1142 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意の内容については、判決文からは不明であるが、刑…
事件番号: 昭和28(れ)9 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】憲法35条が求める捜索および差押えの許可状について、捜索と差押えの各別の許可が記載されていれば、それらを一通の令状に併記することは同条に違反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反、恐喝、公務執行妨害等の罪に問われた。捜査段階において、収税官吏が「臨検捜索差押許可状」という名義の…