一 刑訴施行法第二條は、すべて同類型の事件に同様の取扱をなすものであつて、もとより憲法第一四條の平等の原則に違反するものではない。 二 檢事が論告の際に附帶控訴を申立てたとの一事をもつて違法であると論結することはできない。 三 辯護士の立會なき被告人に對しては、附帶控訴による刑の不利益變更について裁判長が注意を與えることは親切な取扱というべきであるが被告人の辯護機關として資格ある辯護士が立會つている場合には、裁判長がこれについて被告人に注意を與へる必要はない。
一 刑訴施行法第二條と憲法第一四條 二 檢事が論告の際に附帶控訴を申立てることの適否 三 附帶控訴による刑の不利益變更について裁判長が被告人に注意を與えることの要否
刑訴施行法2條,憲法14條,舊刑訴法399條,舊刑訴法403條
判旨
法律上刑を減軽する場合に、2つ以上の刑名が規定されているときは、まず適用すべき刑を選択し、その後に選択した刑を減軽すべきである(刑法69条)。また、心神喪失や心神耗弱の有無、酌量減軽の可否、証拠申請の採否は、いずれも事実審の合理的な裁量に属する。
問題の所在(論点)
1.刑法68条及び69条に基づく法律上の減軽の具体的な順序。2.心神耗弱の認定、酌量減軽の不適用、および証拠申請の却下が裁判所の裁量の範囲内として許容されるか。3.旧刑事訴訟法下における検事の論告時での附帯控訴の適法性。
規範
法律上刑を減軽する場合において、2個以上の刑名があるときは、刑法69条に基づき、まず適用すべき刑を選択し、その後にその選択した刑を減軽すべきである。また、被告人が心神耗弱の状態にあったか否かの判断、酌量減軽(刑法66条)を適用するか否かの判断、および再鑑定等の証拠申請の許否については、いずれも事実審裁判所の自由な裁量に委ねられる。
重要事実
被告人Bは強盗殺人等の罪に問われた。原審は、強盗殺人罪の法定刑である死刑と無期懲役のうち、まず死刑を選択した。その上で、被告人が心神耗弱状態にあったことを認め、法律上の減軽(刑法68条1号)を適用して無期懲役に処した。これに対し弁護人は、減軽の方法が不当であることや、被告人が心神喪失状態であったこと、さらに酌量減軽を行わなかったこと等の違法を主張して上告した。また、被告人Aについても精神鑑定の不備や量刑不当が主張された。
あてはめ
刑法69条は、刑名が二個以上あるときは「先づ適用すべき刑を定め、然る後その選択した刑を減軽すべき」と明定している。本件原審は、強盗殺人罪の死刑を選択した後に心神耗弱による減軽を行っており、この手順に違法はない。また、心神耗弱の主張を排斥した点については、被告人の犯行当時の言動、犯行の模様、鑑定書の記載を総合的に考慮しており、合理的な判断といえる。酌量減軽や証拠申請の採否についても、事実審の裁量権の逸脱・濫用は認められない。検事の附帯控訴についても、旧法下で時期制限がない以上、弁護人が立ち会う公判で行われたのであれば、裁判長による不利益変更の特段の告知がなくても適法である。
結論
原判決の法令適用(刑法69条)に誤りはなく、事実認定や量刑、訴訟手続き(証拠採否・附帯控訴)も裁判所の裁量権の範囲内であり適法である。
実務上の射程
刑法69条の適用順序を確認する際の基本判例である。また、責任能力の判断や酌量減軽、証拠調の必要性が事実審の専権(自由裁量)であることを示す実務上重要な指針となる。答案上は、減軽の計算順序を論じる際の根拠として、あるいは事実認定の合理性を論じる際の裁量権の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1229 / 裁判年月日: 昭和23年7月23日 / 結論: 棄却
裁判所が犯罪の動機、その經過及びその後における被告人の言動等諸般の状況に徴し犯行當時の被告人の精神状態について特に疑を挿むべき點を認めない場合には専門家による精神鑑定の方法によらずして犯行當時の被告人の精神状態を判斷してもそれを以て直ちに經驗則に反する違法があるということはできない。
事件番号: 平成8(あ)482 / 裁判年月日: 平成12年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて悪質かつ重大な結果を招いた強盗殺人等の事案において死刑を科すことは、諸般の事情を考慮しても是認される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀の上、一人暮らしの従弟(36歳)をビニールひもで緊縛・絞殺して権利証等を強取し、死体を海浜に遺棄した(…
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…