強盗殺人罪について無期懲役に処するときは、酌量軽減の規定を適用すべきではない。
強盗殺人罪についての処断と酌量軽減規定の適用。
刑法66条,刑法71条,刑法68条,刑法240条
判旨
酌量減軽(刑法66条)は、法定刑の最低ラインをもって処断してもなお刑が重すぎると認められる場合に限って適用されるべきである。もっとも、酌量減軽の結果得られた処断刑の範囲内で言い渡された刑であれば、減軽の適用の適否が直ちに判決に影響を及ぼすとは限らない。
問題の所在(論点)
刑法66条の酌量減軽を適用するための要件(判断基準)および、法定刑の中で上位の刑(死刑)を選択した状態で酌量減軽を行うことの適法性。
規範
刑法66条に基づく酌量減軽は、被告人の情状を考慮し、法定刑の最低限度をもって処断してもなおその刑に処することが重すぎると認められる場合に限って適用される。したがって、死刑を選択した上で酌量減軽により無期懲役を科すことは、本来の酌量減軽の趣旨に照らせば、適用場面の誤りを含み得る。
重要事実
第一審判決は、被告人の犯情から死刑を選択したが、共犯者との比較で酌むべき事情があるとして酌量減軽を行い、無期懲役刑または10年以上の懲役刑という処断刑を得た上で、無期懲役を言い渡した。原判決もこれを是認したが、弁護人は、酌量減軽は法定刑の最低限でも重すぎる場合にのみ適用されるべきであり、死刑を選択しておきながら減軽するのは法令解釈の誤りであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、第一審および原審が死刑を選択した上で酌量減軽を行い無期懲役を科したことは、法定刑の最低でも重い場合に限って減軽を認める従来の判例法理に相反する判断といえる。しかし、現に言い渡された無期懲役刑は、法定刑(死刑・無期・3年以上)および酌量減軽後の処断刑(無期・10年以上)のいずれの範囲内にも収まっている。したがって、実質的な量刑の妥当性の観点から、刑訴法410条1項但書にいう「判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合」に該当する。
結論
酌量減軽の要件解釈に誤りはあるものの、結論として得られた刑期が適法な範囲内であるため、原判決を破棄するまでもなく上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、酌量減軽の適用の有無自体よりも、最終的に言い渡された刑が法定刑・処断刑の範囲内にあるかどうかが重視される。司法試験においては、酌量減軽の趣旨(法定刑の最低でも重すぎる場合の救済)を論証しつつ、裁量的判断としての側面を意識した論述に用いる。
事件番号: 昭和42(あ)2695 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和41(あ)580 / 裁判年月日: 昭和42年3月24日 / 結論: 棄却
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