刑訴応急措置法第一三条第二項の規定は、同法第一六条の規定と相俟つて、上告審をして純然たる法律審とする趣旨であると解するを相当とするから、たゞに量刑不当乃至事実誤認等を上告理由とすることを許さないばかりでなく、上告審をして旧刑訴第四三四条第三項に基ずく職権調査の手続をも省かしめる立法趣旨であることも明白であるといわなければならない。
刑訴応急措置法第一三条第二項と旧刑訴法第四三四条第三項との関係
刑訴応急措置法13条2項,刑訴応急措置法16条,旧刑訴法430条3項
判旨
量刑不当を上告理由とするか否かは立法政策の問題であり、刑事訴訟法411条は職権による破棄事由を定めたものであって上告申立事由を定めたものではない。
問題の所在(論点)
量刑不当を上告理由から除外する立法(刑事訴訟法応急措置法13条2項等)は憲法14条、37条等に違反し違憲か。また、刑事訴訟法411条は上告申立の事由を定めたものか、あるいは職権破棄の事由を定めたものか。
規範
量刑不当、事実誤認その他の事由を上告理由とするか否かは、憲法81条の場合を除き、諸般の事情を勘案して適宜決定されるべき立法政策の問題であって、法律に一任されている。また、現行刑事訴訟法411条の規定は、上告裁判所が職権をもって原判決を破棄し得る場合を規定したにすぎず、上告申立の理由を定めたものではない。さらに、憲法37条の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成が公平で偏頗の恐れがないことを指すものであり、上告理由の制限はこれに違反しない。
重要事実
被告人A及びBについて、新刑事訴訟法施行前に公訴提起がなされた事件(旧法事件)である。弁護人らは、量刑不当を理由として上告を申し立て、刑事訴訟法応急措置法13条2項が量刑不当を上告理由から除外していることは憲法14条(法の下の平等)、37条(公平な裁判所の裁判を受ける権利)、その他の基本的人権を侵害し違憲であると主張した。また、刑事訴訟法411条に基づき量刑不当が上告理由となるべきであるとも主張した。
あてはめ
量刑不当を上告理由とするかは立法政策の裁量に属し、人種や身分を問わず等しく適用される以上、憲法14条に違反しない。また、憲法37条は裁判所の「組織・構成」の公平を保障するものであり、上告理由を法律学的な事項に限定しても同条を害しない。さらに、刑訴法411条は「職権」による救済規定であり、当事者の「申立権」を基礎付けるものではない。本件は刑訴施行法2条により旧法及び応急措置法が適用されるため、法律審としての性質上、職権調査の権能を前提とする主張も認められない。
結論
量刑不当は適法な上告理由ではなく、上告は棄却される。刑事訴訟法411条は上告申立事由を規定したものではない。
実務上の射程
上告審の性格が「法律審」であることを強調する文脈で使用する。特に、刑訴法411条(職権破棄事由)と405条(上告申立事由)の峻別を示す際のリーディングケースとなる。実務上、量刑不当は405条の上告理由には当たらないが、411条2号により「刑の量定が甚だしく不当である」場合に職権破棄の対象となり得るという現行法の構造を理解する基礎となる。
事件番号: 昭和25(れ)1578 / 裁判年月日: 昭和26年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審がその裁量権の範囲内で適法に行った刑の量定を非難することは、上告理由とならない。また、新刑事訴訟法施行前に公訴提起された事件については、新刑訴法411条による職権での判決変更は認められない。 第1 事案の概要:本件は、新刑事訴訟法の施行前に公訴が提起された事件である。被告人側は、原判決が行っ…