鉱業法六四条の規定によつて鉱業権の行使が制限されても、これによつて被つた損失につき憲法二九条三項を根拠としてその補償を請求することはできない。
鉱業法六四条の規定による鉱業権の行使の制限と憲法二九条三項を根拠とする損失補償請求
憲法29条3項,鉱業法64条
判旨
公共のためにする財産権の制限が、一般的に当然受忍すべき範囲を超えず、特定人に対し「特別の犠牲」を課したものといえない場合には、憲法29条3項に基づく損失補償を請求することはできない。
問題の所在(論点)
鉱業法64条による鉱物掘採の制限が、憲法29条3項にいう「特別の犠牲」に該当し、同条項を直接の根拠として損失補償を請求することができるか。
規範
財産権の制限に対し憲法29条3項に基づく補償を要するか否かは、当該制限が「特別の犠牲」に当たるか否かによって判断される。具体的には、制限が公共の福祉のためにする一般的かつ最小限度の制限であり、何人も当然に受忍すべき範囲内のものである場合には、「特別の犠牲」には当たらず、同条項を根拠とする補償請求は認められない。
重要事実
上告人は、鉱業権を有していたが、鉱業法64条の規定に基づき、公共施設(鉄道、河川、公園、学校、病院等)の近傍において鉱物を掘採するに際し、管理庁等の承諾を得ることが必要とされるという制限を受けた。上告人は、この制限によって損失を被ったとして、憲法29条3項を直接の根拠に損失補償を求めて提訴した。
あてはめ
鉱業法64条の制限は、鉄道等の公共施設および建物の管理運営上支障ある事態の発生を未然に防止することを目的としている。このような制限は、公共の福祉のためにする一般的かつ最小限度の制限にすぎない。したがって、当該制限は特定の者にのみ課される過度な負担ではなく、社会生活を営む上で何人もやむを得ないものとして当然に受忍すべき範囲内のものであって、特定の人に対し「特別の財産上の犠牲」を強いるものとはいえない。
結論
鉱業法64条による制限は「特別の犠牲」に当たらないため、憲法29条3項を根拠として損失補償を請求することはできない。
実務上の射程
本判決は、財産権の制限が受忍限度の範囲内であれば補償不要とする「特別の犠牲」説の公権的判断を示したものである。答案上は、補償規定を欠く法律の合憲性や、本件のように29条3項を直接の根拠とする請求の可否を論ずる際、制限の目的、態様、程度を総合考慮して受忍限度を超えているかを検討する基準として活用する。
事件番号: 昭和50(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和50年4月11日 / 結論: 棄却
文化財保護法八〇条による史蹟名勝天然記念物の現状変更の制限につき損失補償に関する規定を欠くことをもつて、直ちに同条が憲法二九条三項に違反するとはいえない。
事件番号: 昭和49(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和50年3月13日 / 結論: 棄却
公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ、特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をすることができないわけではない。
事件番号: 昭和49(行ツ)81 / 裁判年月日: 昭和52年2月14日
【結論(判旨の要点)】憲法29条3項に基づく損失補償は、特定の個人が公共の利益のために財産的犠牲を強いられた場合に、公平の原則に基づき、その損失を社会全体で分担するために認められるものである。 第1 事案の概要:(提示された入力テキストが判読不能な文字化け状態にあるため、本件の具体的な事案事実は判決文からは不明。ただし…