都市計画法八条一項一号の規定に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
都市計画法八条一項一号の規定に基づく工業地域指定の決定と抗告訴訟の対象
都市計画法8条1項1号,行政事件訴訟法3条
判旨
都市計画法に基づく工業地域の指定は、不特定多数の者に対する一般的抽象的な制約にすぎず、特定の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分ではないため、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
問題の所在(論点)
都市計画法に基づく工業地域の指定(用途地域指定)が、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分」に該当するか。
規範
行政事件訴訟法上の「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。具体的には、公権力の主体たる行政庁が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものを指す。一般的抽象的な法状態の変動をもたらすにすぎない行為や、不特定多数を対象とする規範の定立は、特定の個人に対する具体的な権利侵害を伴わないため、原則として処分性が否定される。
重要事実
行政庁が都市計画法8条1項1号に基づき、都市計画区域内において工業地域を指定する決定(用途地域指定)を行い、これが告示された。これにより、当該地域内の土地所有者は、建築基準法上の用途制限、容積率、建ぺい率等の新たな基準に適合しない建築物の建築ができなくなる等の制約を受けることとなった。上告人らは、本件決定が自己の土地利用権を侵害するものであるとして、その取消しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和61(行ツ)173 / 裁判年月日: 昭和62年9月22日 / 結論: 棄却
都市計画法一一条一項一号の道路に関する都市計画の変更決定は、抗告訴訟の対象とならない。
あてはめ
工業地域の指定が告示されると、建築基準法上の新たな制約が課され、一定の法状態の変動が生じる。しかし、この効果は法令の制定と同様、地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにすぎない。地価や土地環境への影響等の事実上の制約も、結論を左右しない。また、現実に建築を妨げられている者は、建築確認申請に対する拒否処分等の具体的処分を捉えて当該指定の違法を主張し、取消しを求めることで救済が可能である。したがって、指定そのものが個人の権利を直接侵害する具体的処分とは評価できない。
結論
本件工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分には当たらない。したがって、これを取り消す訴えは不適法である。
実務上の射程
用途地域指定のような一般的抽象的な規律については、原則として処分性を否定するリーディングケースである。答案上は、本判決を前提としつつ、地区計画の策定(最判平20.9.10)や土地区画整理事業計画(最大判平20.9.10)など、後発の判例が「特定の権利者への個別的・具体的影響」を認めて処分性を肯定した事案との対比で用いるべきである。
事件番号: 昭和52(行ツ)71 / 裁判年月日: 昭和52年12月23日 / 結論: 棄却
土地区画整理法二〇条三項所定の利害関係者の意見書に係る意見を採択すべきでない旨の都道府県知事の通知は、取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」にあたらない。
事件番号: 昭和54(行ツ)7 / 裁判年月日: 昭和57年4月22日 / 結論: 棄却
都市計画法八条一項三号に基づく高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
事件番号: 平成3(行ツ)208 / 裁判年月日: 平成4年10月6日 / 結論: 棄却
土地区画整理事業計画の決定は、その公告がされた段階においても、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和53(行ツ)35 / 裁判年月日: 昭和53年12月21日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる普通河川の管理について定める普通地方公共団体の条例において、河川法がいわゆる適用河川又は準用河川について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許されない。