一 教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号、昭和五二年文部省令第三二号による改正前のもの)に基づく教科用図書検定基準(昭和三三年文部省告示第八六号)により教科用図書の検定における審査基準の実質的内容とされている学習指導要領が改正されて新たな学習指導要領が全面的に実施された場合には、原則として、改正前の学習指導要領のもとで検定に合格した教科用図書についての同規則一〇条、一一条による改訂検定は許されない。 二 学習指導要領の改正により新たな学習指導要領が全面的に実施された場合には、原則として、改正前の学習指導要領のもとでされた教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号、昭和五二年文部省令第三二号による改正前のもの)一〇条、一一条による改訂検定不合格処分の取消しの訴えの利益は失われる。
一 学習指導要領の改正と教科用図書検定規則(昭和二三年文部省令第四号、昭和五二年文部省令第三二号による改正前のもの)一〇号条、一一条による改訂検定の許否 二 学習指導要領の改正と改正前の学習指導要領のもとにおける改訂検定不合格処分の取消しの訴えの利益
教科用図書検定規則(昭和23年文部省令第4号、昭和52年文部省令第32号による改正前のもの)10条,教科用図書検定規則(昭和23年文部省令第4号、昭和52年文部省令第32号による改正前のもの)11条,行政事件訴訟法9条
判旨
申請拒否処分の取消訴訟において、審査基準の変更等により処分時の申請を認める余地がなくなった場合でも、基準変更の影響が微小で例外的に従前の申請に基づく許可等の可能性が残されているときは、なお訴えの利益が肯定される。
問題の所在(論点)
教科書検定不合格処分の取消訴訟において、訴訟中に審査基準(学習指導要領)が変更された場合、当該不合格処分の取消しを求める「法律上の利益」(行訴法9条1項)が失われるか。
規範
取消訴訟の目的は違法な処分による侵害状態を解消し法益を回復することにあり(行訴法9条)、法益回復の可能性が皆無となった場合には訴えの利益は失われる。申請拒否処分の取消訴訟では、処分の取消しによって「許可等を受ける法律上の地位の取得の可能性」が回復される点に利益がある。したがって、審査基準の変更等によって当該許可等を受けることが法律上不可能になった場合には原則として訴えの利益は失われるが、例外として、基準変更が微小で実質的な変更がなく、従前の申請に基づく手続を続行させることが合理的と認められる場合には、なお訴えの利益が認められる。
重要事実
教科書の著作者である被上告人は、高等学校用日本史教科書の部分改訂につき検定申請(改訂検定)をしたが、不合格処分を受けた。被上告人はその取消しを求めて提訴したが、訴訟継続中に審査基準である学習指導要領が全面的に改正され、旧学習指導要領が失効した。改訂検定は本来、審査基準の同一性を前提とする簡易手続(便法)であるため、上告人(国)側は、審査基準が変更された以上はもはや旧基準に基づく改訂検定を行う余地はなく、訴えの利益が消滅したと主張した。
あてはめ
教科書検定における改訂検定は、審査基準が同一であることを前提に、重複する審査を省略する簡便な手続である。そのため、基準が全面的に改正された場合、原則として旧基準に基づく改訂検定による合格の可能性は消滅する。もっとも、本件においては学習指導要領の変更が記述に及ぼす影響の内容・程度が不明であり、もし変更が微小で実質的な差異がないのであれば、例外的に新基準のもとでの改訂検定が許容され、法益回復の可能性が認められる余地がある。したがって、単に基準が改正されたという一事をもって直ちに訴えの利益を否定することはできず、具体的な影響度合いを審理する必要がある。
結論
本件における基準変更の影響が微小であり、例外的に改訂検定が許される余地があるか否かを更に審理させるため、原判決を破棄し差し戻すべきである。
実務上の射程
拒否処分後の事情変更(基準改正や期間経過)による訴えの利益の成否に関するリーディングケースである。「可能性の回復」という枠組みを提示しつつ、形式的な基準変更だけで切り捨てず、実質的な法益回復の可能性を個別具体的に検討すべきとする柔軟な判断枠組みを示した点に答案上の価値がある。
事件番号: 昭和51(行ツ)26 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
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