養親が養子を相手方として提起した年長養子の禁止に違反する縁組の取消請求訴訟は、養親の死亡により、当然終了する。
養親が提起した年長養子の禁止に違反する縁組取消請求訴訟と養親の死亡による訴訟承継の成否
民法793条,民法805条,民訴法208条,人事訴訟手続法2条,人事訴訟手続法26条
判旨
年長養子禁止違反による養子縁組取消請求権は取消請求権者の一身に専属し、相続の対象とならないため、養親が提起した取消訴訟は養親の死亡により当然に終了する。
問題の所在(論点)
1. 年長養子禁止違反を理由とする養子縁組取消請求権の相続性の成否。 2. 原告である養親が死亡した場合における、縁組取消訴訟の当然終了の成否。 3. 訴訟終了後になされた共同訴訟参加の申出の適法性。
規範
1. 年長養子の禁止(民法793条)に違反する養子縁組の取消請求権は、各取消請求権者の一身に専属する権利であり、相続の対象とはならない。 2. 養親が原告として提起した縁組取消訴訟において、原告が死亡した場合、相手方が死亡した場合のような検察官への訴訟承継規定(当時の人事訴訟手続法26条、2条3項参照)が存在しない。したがって、当該訴訟は原告の死亡と同時に当然に終了する。 3. 訴訟終了後になされた共同訴訟参加の申出は、参加の要件を欠き不適法である。
重要事実
養親A4が、年長養子の禁止に違反してなされた養子縁組の取消しを求めて養子を相手方に訴訟を提起した。しかし、当該訴訟の継続中に原告である養親A4が死亡した。これに対し、A4の相続人ら(上告人A1〜A3)が、本件訴訟は当然には終了せず相続の対象となる、あるいは共同訴訟参加が可能であると主張して争った事案である。
あてはめ
1. 本件取消請求権は、身分法上の秩序形成を目的とする権利であり、その性質上、取消請求権者本人の意思に委ねられた一身専属的な権利であると評価される。ゆえに、相続人による権利承継は認められない。 2. 人事訴訟において被告が死亡した場合には検察官への承継が法定されているが、原告が死亡した場合にこれを承継させる規定は存在しない。この法意に照らせば、原告の死亡により訴訟は目的を達し得なくなり、当然に終了すると解される。 3. 本件訴訟はA4の死亡時に終了しているため、その後になされたA1らによる共同訴訟参加は、既に存在しない訴訟への参加を求めるものであり、不適法として却下されるべきである。
結論
本件取消請求権は相続されず、訴訟は原告の死亡により当然に終了する。したがって、訴訟終了後になされた共同訴訟参加の申出も不適法である。
実務上の射程
一身専属的な身分上の権利に基づく訴訟において、原告の死亡による訴訟終了の原則(訴訟承継の否定)を示す。答案上では、人事訴訟における訴訟承継の可否や、一身専属性の検討が求められる場面で、相続性の否定と訴訟終了を導く根拠として活用できる。現行の人事訴訟法下においても、承継規定がない場合の一般原則として機能する。
事件番号: 昭和52(オ)385 / 裁判年月日: 昭和53年7月17日 / 結論: 棄却
養子夫婦の一方が養親夫婦の一方より年長であることを理由に縁組全部の取消が請求された場合には、年長の養子と年少の養親との間の縁組だけを取り消せば足りる。