養子夫婦の一方が養親夫婦の一方より年長であることを理由に縁組全部の取消が請求された場合には、年長の養子と年少の養親との間の縁組だけを取り消せば足りる。
養子夫婦の一方が養親夫婦の一方より年長であることを理由に縁組を取り消す場合における取消の限度
民法793条,民法795条本文,民法803条,民法805条
判旨
夫婦共同縁組において養子の一方が養親の一方より年長である場合、民法793条(尊属・年長者養子の禁止)に基づく取消しは、その年長関係にある当事者間の縁組に限られ、他の有効な縁組まで当然に失効させるものではない。
問題の所在(論点)
夫婦の一方が配偶者とともにする縁組(民法795条)において、養子の一方が養親の一方より年長であるという取消事由(同法793条、805条)が存在する場合、縁組の全部が取り消されるべきか、それとも一部の取消しにとどめるべきか。
規範
夫婦共同縁組(民法795条本文)は、夫婦の意思一致や家庭の平和、養子の福祉に配慮して共同を要求するが、本来は各当事者ごとに個別の身分関係を創設する法律行為である。一方、年長者養子の禁止(同法793条)は身分秩序の尊重を趣旨とする。したがって、夫婦共同縁組の一部の当事者間で年長関係による取消事由がある場合、その特定の縁組のみを取り消せば足り、他の当事者間の縁組を存続させても民法795条の趣旨には反しない。よって、取消しの効力は年長関係にある者同士の縁組に限定される。
重要事実
養親夫婦であるD(明治18年生)及びE(明治28年生)と、養子夫婦であるB1(明治24年生)及びB2(明治33年生)が、昭和15年に夫婦共同縁組の届出を行った。しかし、養子B1は養母Eよりも4歳年長であったため、Eの親族である上告人らが、民法793条および805条に基づき、本件養子縁組全部の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
本件では、養子B1が養母Eより年長であるため、両者間の縁組には取消事由がある。しかし、B1と養父D、あるいは養子B2と養親夫婦(D・E)との間には年長関係の問題は生じない。縁組は各当事者ごとに別個に成立するものであり、B1とEという特定の組合せにおける不当な身分秩序のみを解消すれば、身分秩序の尊重という民法793条の趣旨は達せられる。また、残りの縁組を存続させても直ちに家庭の平和を害するとはいえないため、一部の取消しで足りると解される。
結論
年長の養子と年少の養親との間の縁組だけを取り消せば足り、それ以外の有効な縁組については取消しの対象とならない。したがって、縁組全部の取消しを求める請求は認められない。
実務上の射程
夫婦共同縁組における『不可分性』の限界を示した判例である。民法795条の共同縁組要件を重視しつつも、成立後の解消局面(取消しや無効)においては、身分関係の個別性を尊重し、できる限り有効な身分関係を維持しようとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和55(オ)1133 / 裁判年月日: 昭和56年4月24日 / 結論: 棄却
甲乙夫婦の乙に縁組意思がない夫婦共同の養子縁組につき、甲が永年乙と同居しながら突如別居して単身で縁組の相手方と同居したため乙の家庭と縁組の相手方との間に紛争を生じ、また、縁組により甲乙間の子らの相続分が減少することが乙の意思に反し、かつ、乙の家庭内の円満を害する可能性を多分に含んでいる等、原判示の事実関係のもとにおいて…
事件番号: 昭和43(オ)723 / 裁判年月日: 昭和43年12月20日 / 結論: 棄却
養親の実子は、養親死亡後養子を相手方として養子縁組無効の訴を提起する訴の利益を有する。