父と同居して家業に従事する満二〇才の子が所有し父の居宅の庭に保管されている自動車につき、所有者登録名義人となつた父は、右自動車の運行について自動車損害賠償保障法三条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。
自動車の所有者でない所有者登録名義人が自動車損害賠償保障法三条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたるとされた事例
自動車損害賠償保障法3条
判旨
自動車の登録名義人が、名義貸しの経緯や所有者との関係、保管場所等の事情に照らし、運行を事実上支配・管理でき、かつ社会通念上運行を監視・監督すべき立場にある場合には、自賠法3条の「運行供用者」に該当する。
問題の所在(論点)
自動車の真実の所有者ではないが、名義貸しを承諾した登録名義人が、自賠法3条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)として賠償責任を負うか。
規範
自動車の所有者から依頼されて登録名義人となった者が、①名義人となった経緯、②所有者との身分関係、③自動車の保管場所その他諸般の事情に照らし、自動車の運行を事実上支配・管理することができ、社会通念上、自動車の運行が社会に害悪をもたらさないよう監視・監督すべき立場にある場合には、自賠法3条所定の「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)にあたる。
重要事実
被上告人B2は、自動車の真実の所有者であった。B2の実父である被上告人B1は、B2から依頼されて本件自動車の所有者登録名義人となることを了承した。当時、B2は20歳であり、B1と同居して農業に従事していた。また、当該自動車はB1の居宅の庭に保管されていた。
あてはめ
被上告人B1は、実子であるB2の依頼で名義人となることを了承しており、名義取得の経緯に主体性がある(①)。また、B2は当時20歳でB1と同居し、生活・経済基盤を共にしていたという密接な身分関係が存在する(②)。さらに、自動車がB1の居宅の庭に保管されていたことから、B1は物理的にも運行を管理し得る状況にあった(③)。これらの事情を総合すると、B1は運行を事実上支配・管理でき、運行による害悪を防止すべき監視・監督義務を負う立場にあったといえる。
結論
被上告人B1は運行供用者にあたるため、自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う。本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
名義貸し事案における運行供用者性の判断基準を示した重要判例である。答案上は、運行利益の有無以上に「運行支配」の有無、特に監視・監督の可能性と義務(社会的地位)を重視する論理構成をとる際に活用する。同居の親族間のように、事実上の支配力が及びやすい関係性において射程が及ぶ。
事件番号: 昭和44(オ)456 / 裁判年月日: 昭和44年9月12日 / 結論: 棄却
自動車修理業者が修理のため預かつた自動車をその被用者が運転して事故を起こした場合には、右修理業者は、特段の事情のないかぎり、自動車損害賠償保障法三条による運行供用者としての責任を負う。