相続人不存在の場合において、特別縁故者に分与されなかつた相続財産は、相続財産管理人がこれを国庫に引き継いだ時に国庫に帰属し、相続財産全部の引継が完了するまでは、相続財産法人は消滅せず、相続財産管理人の代理権も引継未了の相続財産につき存続する。
特別縁故者に分与されなかつた相続財産の国庫帰属の時期及び相続財産管理人の代理権消滅の時期
民法956条1項,民法958条の3,民法959条
判旨
相続人不存在の場合、残余相続財産が国庫に帰属する時期は、特別縁故者への分与手続等の終了時ではなく、相続財産管理人が国庫に財産を引き継いだ時である。したがって、引継完了までは相続財産法人は消滅せず、相続財産管理人の代理権も存続する。
問題の所在(論点)
相続人不存在において、民法959条に基づく残余相続財産の国庫帰属時期はいつか。また、国庫への引継が完了するまでの間、相続財産管理人は意思表示を受領する権限(代理権)を有するか。
規範
民法959条は残余相続財産の最終的な帰属主体を規定したものであり、帰属の時期を定めたものではない。相続財産が国庫に帰属するのは、特別縁故者への分与手続の不申立・却下・一部決定が確定した時ではなく、相続財産管理人が現実に残余財産を国庫に引き継いだ時と解すべきである。それまでの間、相続財産法人は存続し、相続財産管理人は引継未了の財産について代理権を保持する。
重要事実
本件土地の賃貸人である上告人は、相続人不在となった借地上の建物につき、相続財産管理人Dに対し、延滞賃料の催告及び賃貸借契約解除の意思表示を行った(昭和45年6月15日到達)。Dが残余相続財産を実際に国庫に引き継いだのはその後の昭和46年1月1日であった。被上告人側は、解除の意思表示の時点で既に財産は国庫に帰属しており、Dの代理権は消滅していたと主張して、解除の効力を争った。
事件番号: 昭和27(オ)604 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
商人の借地権の放棄に関する契約は、たとえ右借地権がその営業所の敷地に関する場合であつても、商法第五〇九条にいわゆる「其営業ノ部類ニ属スル契約」とはいえない。
あてはめ
本件において、残余財産である本件各建物の所有権等がDから国庫に引き継がれたのは昭和46年1月1日である。上告人による催告及び解除の意思表示が到達したのはそれに先立つ昭和45年6月15日であるから、この時点ではまだ相続財産法人は消滅しておらず、Dは相続財産管理人としての代理権を有していたといえる。したがって、Dは当該意思表示を受領する権限を有しており、解除の効力を否定することはできない。
結論
残余相続財産の国庫帰属時期は、現実の引継完了時である。本件解除の意思表示当時、相続財産管理人の代理権は存続していたため、解除は有効に成立し得る。
実務上の射程
司法試験においては、相続人不存在の事案で管理人の代理権消滅時期が問題となる場面(解除や請求の相手方の適格性)で本法理を用いる。959条を「清算規定」と捉え、事務処理の便宜と取引の安全の観点から、形式的な帰属ではなく「現実の引継時」を基準とする論理を構成する際に有用である。
事件番号: 昭和50(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和51年3月15日 / 結論: 棄却
訴訟代理権を授与された者が本人の死亡したのちその者を原告と表示して提起した訴は、死亡した本人の相続人のための訴として適法である。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和39(オ)241 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
後任理事の選任があるまでは退任理事になお従前の権限を行わせる旨寄附行為に規定されている場合の右権限の存続期間は、後任理事の選任手続に要する相当期間に限られると解すべきではない。
事件番号: 昭和37(オ)54 / 裁判年月日: 昭和39年4月21日 / 結論: 棄却
株式会社の清算結了の登記があつても、会社を被告とする給付訴訟が係属するときは、清算結了とはいえないから、会社は消滅しない。