借地人が、地上建物を改築するにあたり、旧建物を一時に全部取り毀さず、新建物の建築工事と並行してその進行状況に応じて順次取り毀し、新建物完成の時に全部取り毀したときでも、右旧建物の取毀しは、借地法七条にいう建物の滅失にあたる。
借地上の旧建物が新建物の建築工事に応じ逐次取り毀され新建物完成の時に全部取り毀された場合と借地法七条にいう建物の滅失
借地法7条
判旨
借地法7条(現行借地借家法7条)にいう「建物の滅失」は、建物の一時的な全部取り壊しに限らず、新築工事と並行して順次旧建物を取り壊し、最終的に全部が取り壊される場合も含まれる。
問題の所在(論点)
借地法7条(現行借地借家法7条1項参照)の「建物の滅失」の意義。特に、旧建物の取り壊しと新築工事が並行して行われ、一時的に旧建物の一部が存続している場合であっても「滅失」と認められるか。
規範
借地法7条(建物の滅失による借地権の存続期間の延長)にいう「建物の滅失」とは、必ずしも建物を一時に全部取り壊し、または解体して借地の大部分が更地となった状態が現出した場合に限られない。建物の取り壊しと並行してこれとは別個の建物の新築工事を進め、新築建物完成時(または工事の進行過程)において旧建物が全部取り壊されるような場合をも含むと解するのが相当である。
重要事実
借地権者(被上告人)は、従前の建物(バラック約12坪)のうち、家財置場等として使用し工事に支障のない約2坪を残し、残余を取り壊して新築工事に着手した。その後、新築工事の進行程度に応じて残存部分を順次取り壊し、着工から約2ヶ月後(9月15日頃)までには旧建物の全部を取り壊して新たな建物を新築した。これに対し、貸主(上告人)は「一時に全部が取り壊されていない以上、滅失にあたらない」と主張して、借地権の存続期間延長の効力を争った。
事件番号: 昭和45(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
借地権の消滅前に建物が滅失し、借地権者が建物を再築したのに対して、土地所有者が遅滞なく異議を述べた場合でも、借地契約が残存期間の満了に伴い借地法六条により更新されたときは、更新後の借地権は、その後滅失建物の朽廃すべかりし時期が到来しても消滅しない。
あてはめ
本件では、当初に大部分の取り壊しが行われ、残存した約2坪も新築工事の進捗に合わせて順次取り壊されており、最終的には旧建物の全部が取り壊されている。このような工程は、実質的に建物の建て替えに伴う滅失の過程にあるといえる。したがって、物理的に一瞬にして全ての建物が消滅する状態を経なくとも、旧建物の社会的・経済的な利用価値が失われ、新築建物への置換が予定されている以上、同条にいう「滅失」に該当すると評価される。
結論
本件のような順次取り壊しの形態であっても「建物の滅失」にあたり、借地法7条(期間延長の規定)が適用される。また、貸主が遅滞なく異議を述べなかった以上、借地権は存続する。
実務上の射程
建物の建て替えが「滅失」にあたることを前提とした上で、その時間的態様を緩やかに解釈するものである。現行借地借家法7条1項の解釈においても同様に、実務上、居住を継続しながらの建て替えや、部分的な取り壊しと新築が重なるケースにおいて、借地権消滅を防ぐ(あるいは期間延長を認める)ための重要な根拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)259 / 裁判年月日: 昭和42年7月18日 / 結論: 棄却
建物が部分的にみるときは、その骨格部分ともいうべき土台、柱脚部及び外廻り壁下地板、屋根裏下地板等に相当甚しい損耗があり、内部造作材も老化しているが、同時に建物全体としてみるときは自力によつて屋根を支え独立して地上に存在し、その内部への人の出入りに危険を感ぜしめることがないなど原判示の事情の如く、いまだ建物としての社会的…
事件番号: 昭和38(オ)121 / 裁判年月日: 昭和39年5月12日 / 結論: 棄却
浴場、居宅、物置、便所および廊下を以て構成される建物のうち、ボイラー室全部と居宅の北半分程をとりこわしその跡へ新たな材料を使用して土台から新たに築き直して従来の浴場並びに居宅とは棟の方向を異にする一棟を建てて浴場とする等の改造をした場合であつても、その後完成された建物と従前の建物とを比較して原判示のような事実(一審判決…
事件番号: 昭和47(オ)628 / 裁判年月日: 昭和48年3月13日 / 結論: 棄却
建物所有を目的とする土地の賃借人が賃借土地上に建物を所有しその登記を経由しても、その後土地の賃貸人の債権者が右土地の仮差押をしその登記を了したのち賃借人が建物を滅失させ滅失登記をしたときは、のちになつて賃借人があらたな建物を建築し保存登記をしても、賃借人は賃借権をもつて仮差押債権者に対抗することができない。
事件番号: 昭和44(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和47年2月10日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約成立の事情として、賃貸人は、当初、賃借人の借地申入れに対し、他人に土地を貸すときは回収が困難になるとして賃貸することに反対していたが、賃借人や仲介に入つた知人から、一時しのぎに僅かな土地でもよいし、何時でも取り払える仮小屋の建物でよいから」と執拗に懇請され、やむなくバラツク建物に限り建築を許す趣旨で、約六…