借地権の消滅前に建物が滅失し、借地権者が建物を再築したのに対して、土地所有者が遅滞なく異議を述べた場合でも、借地契約が残存期間の満了に伴い借地法六条により更新されたときは、更新後の借地権は、その後滅失建物の朽廃すべかりし時期が到来しても消滅しない。
借地上にあつた滅失建物の朽廃すべかりし時期が借地法六条による更新後に到来した場合と借地権の消長
借地法2条1項,借地法5条1項,借地法6条,借地法7条
判旨
借地権消滅前に建物が滅失し、再築への異議により借地法7条の更新が認められない場合でも、残存期間満了時に同法6条の更新は認められ、更新後は再築された建物を基準に存続期間が判断される。
問題の所在(論点)
借地法7条の異議により同条の更新が否定される場合に、同法6条による更新が認められるか。また、更新が認められた場合、更新後の借地権の存続期間は滅失した旧建物の朽廃時期によって制限されるか。
規範
1. 借地権消滅前に建物が滅失し、土地所有者が再築に対し遅滞なく異議を述べた場合、借地法7条による更新の規定は適用されない。2. しかし、この場合でも同法6条による更新の規定は適用され、正当事由がない限り契約は更新される。3. 一旦更新された以上、更新後の借地権は再築された建物を保持するためのものとみなされるため、同法2条1項但書の「建物」は再築建物を指し、滅失建物の朽廃予定時期によって借地権が消滅することはない。
重要事実
借地権の存続期間中に建物が滅失したため、借地権者は建物を再築した。土地所有者はこの再築に対して遅滞なく異議を述べた。その後、借地契約の残存期間が満了したが、地上には再築された建物が存在していた。土地所有者は更新を拒絶し、さらに「仮に更新されたとしても、旧建物が朽廃すべき時期(旧建物の耐用年数経過時)が到来すれば借地権は消滅する」と主張して、土地の明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和47(オ)628 / 裁判年月日: 昭和48年3月13日 / 結論: 棄却
建物所有を目的とする土地の賃借人が賃借土地上に建物を所有しその登記を経由しても、その後土地の賃貸人の債権者が右土地の仮差押をしその登記を了したのち賃借人が建物を滅失させ滅失登記をしたときは、のちになつて賃借人があらたな建物を建築し保存登記をしても、賃借人は賃借権をもつて仮差押債権者に対抗することができない。
あてはめ
本件では所有者が再築に異議を述べているため、7条による期間延長は認められない。しかし、期間満了時に建物が存在する以上、6条の更新規定が適用される。所有者の異議に正当事由があるとはいえず、契約は更新されたと解される。更新後は、再築された建物を保持することが目的となるため、旧建物の朽廃時期は借地権の存続に影響しない。再築への異議や旧建物の朽廃時期は、あくまで更新拒絶の「正当事由」の判断において考慮されるべき事情にすぎない。
結論
借地法6条により借地契約は更新される。更新後の借地権は再築建物を基準として存続し、旧建物の朽廃時期の到来によって当然に消滅することはない。
実務上の射程
借地法下の事案であるが、借地借家法7条・8条・5条・6条の解釈においても重要。再築への異議がある場合の法定更新の可否と、更新後の建物の同一性判断の基準を示す。答案では、期間満了時の建物存在による更新(借地借家法5条1項)を認めた上で、再築の事情を同6条の正当事由の判断要素として位置づける際に活用する。
事件番号: 昭和48(オ)411 / 裁判年月日: 昭和50年9月11日 / 結論: 棄却
借地人が、地上建物を改築するにあたり、旧建物を一時に全部取り毀さず、新建物の建築工事と並行してその進行状況に応じて順次取り毀し、新建物完成の時に全部取り毀したときでも、右旧建物の取毀しは、借地法七条にいう建物の滅失にあたる。
事件番号: 昭和48(オ)859 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
借地法四条一項但書の正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし、その後の事情を右判断基準時の事実関係を認定するための資料とした原審の認定判断は正当である。
事件番号: 昭和43(オ)1345 / 裁判年月日: 昭和44年6月19日 / 結論: 棄却
建物保護に関する法律一条二項(昭和四一年法律第九三号による削除前のもの)は、建物の朽廃以外の滅失の場合にも適用がある。
事件番号: 昭和25(オ)293 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
借地法にいわゆる建物とは、一般通念に従つてその意義を定むべきで、家屋台帳等公の帳簿に記載され課税の対象となつているものだけに限るものと解すべきではない。