相続の放棄は、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならない。
相続の放棄と詐害行為取消権
民法424条,民法939条
判旨
相続の放棄は、消極的に財産の増加を妨げる行為にすぎず、かつ身分行為として他人の意思により強制されるべきではないため、詐害行為取消権行使の対象とならない。
問題の所在(論点)
相続の放棄が、民法424条の詐害行為取消権の対象となるか。換言すれば、相続の放棄が「財産権を目的とする法律行為」に該当し、かつ債務者の積極的な財産減少行為といえるか。
規範
1. 詐害行為取消権(民法424条)の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎない行為は含まれない。 2. 相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきではない。
重要事実
債務者である相続人が相続の放棄をしたことに対し、債権者が当該相続放棄は債権者を害する詐害行為に当たるとして、民法424条に基づきその取消しを求めて提訴した事案。判決文からは具体的な相続財産の内容や債務額等の詳細は不明である。
あてはめ
1. 相続の放棄は、相続人の意思および法律上の効果からみて、既得財産を積極的に減少させる行為というよりは、むしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないと解するのが妥当である。 2. もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるとすれば、結果として債権者が相続人に対し相続の承認を強制することと同じ帰結を招く。これは、身分行為については自由な意思を尊重し、他人が強制すべきではないという原則に反し、著しく不当である。
結論
相続の放棄は、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならない。
実務上の射程
本判例は、相続放棄の詐害行為性を一律に否定した。一方、遺産分割協議は相続放棄と異なり、既に生じた具体的相続分を確定させる財産的性質を有するため、詐害行為取消権の対象になり得る点(最判平11・6・11参照)と比較して論述すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)454 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
債権発生前の行為は詐害行為にならない。
事件番号: 平成10(オ)1077 / 裁判年月日: 平成11年6月11日 / 結論: 棄却
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。