共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となる。
遺産分割協議と詐害行為取消権
民法424条,民法907条1項
判旨
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、相続財産の帰属を確定させる財産権を目的とする法律行為であるため、詐害行為取消権の対象となる。
問題の所在(論点)
共同相続人間の遺産分割協議が、民法424条1項の「財産権を目的とする法律行為」として詐害行為取消権の対象となるか。
規範
遺産分割協議は、相続開始により共同相続人の共有となった相続財産の帰属を確定させ、単独所有や新たな共有関係に移行させる性質を有する。したがって、遺産分割協議は「財産権を目的とする法律行為」(民法424条1項)に該当し、詐害行為取消権の対象となり得る。
重要事実
債務者Eは、被上告人に対し連帯保証債務を負っていたが、履行を遅滞させた。その後、Eは共同相続人である子(上告人ら)との間で、被相続人D所有の建物についてEは持分を取得せず、子が各2分の1の持分を取得する旨の遺産分割協議を成立させ、登記を完了した。Eはその直後に自己破産を申し立てたため、債権者である被上告人が、当該遺産分割協議を詐害行為として取り消すよう求めた。
事件番号: 昭和47(オ)1194 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 棄却
相続の放棄は、民法四二四条の詐害行為取消権行使の対象とならない。
あてはめ
本件遺産分割協議は、本来であればEが取得し得た相続財産(建物の共有持分等)を放棄し、他の相続人に帰属させたものである。これは相続財産の帰属を確定させる財産権を目的とする法律行為に他ならない。Eは多額の負債を抱え、債権者に分割履行を述べつつ破産申し立て直前に本件協議を行っており、無資力状態で責任財産を減少させる行為といえる。したがって、債権者を害する詐害行為としての適格性を有する。
結論
遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となり得るため、本件遺産分割協議を詐害行為として取り消すことができるとした原判決は正当である。
実務上の射程
相続放棄(民法939条)が「身分上の行為」として詐害行為取消権の対象外とされる(最判昭49.9.20)のに対し、遺産分割協議は「財産権を目的とする法律行為」として対象になるという対比で答案上頻出する。答案では、協議の法的性質(共有関係の解消)から財産権目的であることを論証し、相続放棄との違い(放棄は遡及的に相続人でなくなる身分行為)に触れるのが一般的である。
事件番号: 昭和41(オ)1270 / 裁判年月日: 昭和42年6月29日 / 結論: 棄却
総債権者のための唯一の共同担保である債権の譲渡が、判示のような事情から債務の本旨に従つた弁済と同視しえず、かつ、他の債権者を害することを知りながらされたときは、右債権譲渡は債権者詐害行為にあたる。
事件番号: 昭和31(オ)1072 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が債権者の貸金債権の存在を知りながら、これを害する目的で不動産を贈与した場合には、詐害行為取消権の行使が認められる。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)は、債務者である上告人A1に対して貸金債権を有していた。債務者A1は、この貸金債権の存在を知りながら、債権者を害する目的で、自己の所有する…