破産者の行為が否認されたことを理由に右行為を原因とする登記を原状に回復するには、破産法一二三条の否認の登記によるべきである。
破産者の行為が否認された場合と右行為を原因とする登記を原状に回復する登記の方法
破産法72条,破産法123条
判旨
破産者の行為が否認された場合の登記の原状回復は、一般の抹消登記ではなく「否認の登記」によるべきであり、破産管財人は相手方に対し否認の登記手続を請求すべきである。
問題の所在(論点)
破産法上の否認権が行使された場合、登記の原状回復のために請求すべき登記手続の種類は何か。また、抹消登記を請求する旨の訴えに否認の登記請求が含まれると解してよいか。
規範
否認の効力は、破産財団との関係において、かつ破産状態が存続する限りにおいて相対的に生ずるものである。そのため、否認による登記の原状回復については、一般の抹消登記の手続によるのではなく、破産法上の「否認の登記」制度(旧法123条1項、現行法258条1項参照)によるべきである。
重要事実
破産者Dが本件不動産の所有権を上告人A1に譲渡し、さらにA1から上告人A2へ所有権譲渡の登記がなされた。破産管財人(被上告人)は、これらの譲渡行為が否認対象であるとして、各登記の「抹消登記手続」を求めて提訴した。
事件番号: 昭和46(オ)912 / 裁判年月日: 昭和47年6月15日 / 結論: 棄却
破産法七二条一号による否認権行使の場合において、受益者が同号但書により否認を免れうるためには、その行為の当時破産債権者を害することを知らなかつたことが認められれば足り、その知らないことにつき過失がなかつたかどうかは問わないものと解すべきである。
あてはめ
否認の効力は物権的に財産を破産財団に復帰させるが、破産手続の廃止・終結により当然に消滅する相対的なものである。一般の抹消登記を行うと、否認の効力が消滅した際に回復登記を要するなど不都合が生じる。破産法が特に「否認の登記」及びその職権抹消の制度を設けている趣旨は、このような否認の相対的効力を反映させるためである。本件において、被上告人は「抹消登記」を請求しているが、その実質的な目的は否認による原状回復にあり、請求には「否認の登記」手続の請求が含まれていると解するのが相当である。
結論
破産管財人は否認の登記手続を請求すべきであり、抹消登記を求める請求であっても否認の登記手続を命じることは適法である。
実務上の射程
否認権行使に伴う登記請求の訴状を作成する際の請求趣旨の特定に関する指針となる。実務上、抹消登記を請求しても否認の登記として柔軟に解釈される余地はあるが、規範的には「否認の登記」を請求すべきとされる点に注意を要する。
事件番号: 昭和44(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄差戻
破産法七四条が対抗要件の否認について規定した趣旨は、対抗要件の充足行為も、本来は、同法七二条の一般規定によつて否認の対象となりうべきものであるが、原因行為に否認の理由がないかぎり、できるだけ対抗要件を具備させて当事者の所期の目的を達成させることとし、一定の要件をみたす場合にのみ、とくにこれを否認しうることとしたものと解…
事件番号: 昭和36(オ)275 / 裁判年月日: 昭和38年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】破産法上の詐害行為取消権における「破産者が破産債権者を害することを知りて」とは、単に他の債権者を害する認識があれば足り、加害の意図や意欲までは不要である。また、債務超過かつ資金繰り困難な状況下で、特定債権者の支払猶予の代償として唯一の安定した資産に担保を設定する行為は、原則として詐害行為に該当する…